安藤さん、拙著を本当に丁寧にお読みいただき、恐縮です。ご批判に、できるだけ簡潔にわかりやすくなるようお答えしたいと思います。 まず、労働法は出発点として、労働者と使用者という関係に立つ両当事者が展開する社会関係のうち、法的に問題をとらえうる領域を対象として、その合理的なコントロールを模索するという前提があります。そのうえで、いわゆる労働市場の動きについて妥当な範囲と方法で、法の適用対象となる人々が十全に能力を発揮して職を得ることができるようにすることを目的とした法的介入を行うことや、高齢者の生活を安定させるために職業生活からの引退過程をサポートすることなど、法学的方法で対応可能な領域を徐々に拡大しています。 要するに、労働法は労働関係をめぐる諸問題をすべて掌握して全的な解決をめざす、などということは前提としていません。労働法の守備範囲は、法的コントロールが可能な対象を限定したうえで、法の装