出会いは最悪だった。 ホーチミンの空港は、テト(旧正月)に地元へ帰る人で混雑していた。列は誘導されず、搭乗手続きは遅々として進まない。いつ飛行機に乗れるか分からない不安に誰もが顔を曇らせていた。 ベトナム航空・ハノイ行きの便の離陸まで1時間。 焦る気持ちから、私は人をかき分けて前へ、前へと進んでいった。気分は大阪のおばちゃんだ。すると横に並んでいた男から舌打ちされた。20代前半のお兄ちゃんだった。 ここで1つ注釈しておきたい。 ベトナム人の気質は、とても穏やかだ。 日本人は礼儀正しい民族だと言われているが、これほどの混雑に巻き込まれたらブーイングが漏れ聞こえてくるだろう。空港職員にクレームをつける人もいるはずだ。ところがホーチミン空港に集まったベトナム人たちは文句1つ漏らさず、静かに順番を待っていた。日本人以上に穏やかで礼儀正しい。それがベトナム人の性格なのかもしれない。 そのベトナム人に