学生の時から、福井さんはどこかそういう泥臭さ、地域っぽさを醸し出していたことを思い出すまで、その違和感は消えずに僕の脳みその表層に留まっていたのだが、ひとたび福井さんのキャラクターを思い出したとたん、僕は福井さんにいろいろな質問を開始した。 「住民からの要求は?」 「予算は?」 「住民との話し合いはどのようにどれくらいあったの?」 聞き進めていくと、もう一つ、おかしなことが露呈してきて、僕の直感は先鋭化した。 どうやら、福井さんは、この建築が建つまで、30回近くも地域住民の代表と話し合いを重ね、暗い場所という地域の共通言語を示し、「日光を取り入れ明るくする形です」という形の説明によって世の建築家が提示しやすい特殊な形から生まれる不安感を素通りし(デンマークの建築家集団BIGのアイコニックな建築形状の民主性に匹敵する説明によって)、住民の心を掴み、自ら施工に参加して経費を浮かせて、特別な法規