濃い霧に包まれた晩秋の夜、ジュネーブ中央駅に電車がなんとか停止した。10人ほどの韓国人が注意深くプラットホームに足を踏みだし周囲を見回した。私は急いで近づき、「遠路はるばるようこそ」とあいさつした。一行の目には嬉しさと断固さが重なってにじんでいた。「骨を埋める覚悟でここに来ました」。20年前、韓国ネスレの労働者のスイス遠征闘争はこうして始まった。 正直なところ、私はその悲壮で断固とした覚悟が不安だった。緻密な戦略もなく、頼るべきところのないスイスに来て、見通しのない闘いをどうするつもりなのか。一行を迎えに来ていた国際食品労連の関係者の表情も不安そうにみえた。だが、彼らの闘いにはためらいがなかった。労働者の賃金引き上げ要求に対してネスレは、韓国工場の海外移転という脅しで対抗し、100日以上ストライキが続いており、これを問い詰めるためにネスレ本社を訪れに来たということを、休む暇もなく伝えた。
百貨店そごう・西武の労働組合が経営側に対し、31日にストライキを始めると通知しました。雇用の維持などについて期限ギリギリまで協議を続けますが、スト実施に至れば日本では異例の展開です。背景や意味合いを整理しました。(渥美龍太、畑間香織) A 労働者が賃金や労働条件などの要求を通すため、団結して一時的に働くのを拒否することです。力の強い経営側と対等に交渉するために、憲法で保障された権利です。ただ、交通機関で実施すれば人々を足止めしてしまうなど社会的な影響が大きく、正当なストだと担保するための手続きが必要になります。 例えば労組が経営側に対し、スト実施を事前に通知するように労働協約で定めていることが多いです。そごう・西武の場合も、実施の48時間前までの通知が必要でした。また同組合の規約には、ストの権利を確立するためには組合員の過半数の賛成が必要と定めてあり、今回は7月に投票を実施して93.9%の
どうすればいいのか。就職氷河期に社会に出たロスジェネ・非正規の女性についてのアンケートには、極めて多くの意見が集まりました。必要な公助を広げるには、声を上げ、政治を動かすことが欠かせません。それは他世代や男性を救うことにもつながるはずです。 ■解雇された私、国政に声届けたい 社民党副党首・大椿裕子さん(48) 「解雇された人間が国政に挑戦してもいいじゃん!」と、今回の衆院選で大阪9区から立候補しました。 1996年に四国学院大を卒業したロスジェネ世代です。専攻は社会福祉でした。当時は施設などに就職する学生が多かったのですが、私は女性支援の仕事に就きたいと思いながら卒業後は四国で複数のバイトをして暮らしていました。社会福祉士や保育士の資格は取りました。 年齢とともに正規雇用が難しくなる実感から焦りが生まれ、工場の派遣や障害者支援団体で働いた後、2006年、関西学院大で障害のある学生の支援を担
「感染症×アナキスト(医療編) 〈アナキスト医師/イサック・プエンテ〉」 当センター通信で連載「テキスト×アナキスト」がスタートしたばかりの海老原弘子さんによる緊急寄稿「感染症×アナキスト」後編(医療編)を掲載します。 *前編(教育編ーアナキスト教育者/フェレ・イ・グアルディア)はこちらから。 ベストセラー作家クロポトキン 《現代の学校》を創設したアナキスト教育者フランシスコ・フェレ・イ・グアルディアの敵は、カトリック教会だけではなかった。政治、 経済、文化と権威を頂点とするピラミッド型組織として成り立つ各界の大物の中に、フェレを憎んでいた者は数知れない。あらゆる権威を否定するフェレは、既存のスペイン社会全体にとっての「Persona non grata(好ましからざる人物)」だったのだ。 その一人が『大衆の反逆』の著者ホセ・オルテガ・イ・ガセットと並ぶスペイン哲学界の巨人ミゲル・デ・ウナ
赤の発色が鮮やかなスターリン追悼大会のポスターを示すエル・ライブラリーの谷合佳代子館長=大阪市中央区で2021年4月21日午後3時9分、野口由紀撮影 労働専門の私設図書館が大阪にあることをご存じだろうか? 大阪市中央区のエル・おおさか(大阪府立労働センター)4階にある「エル・ライブラリー」(大阪産業労働資料館)。蔵書数12万冊、西日本随一の専門性を誇る施設だ。新型コロナが経営を圧迫し、雇用をおびやかす今、ライブラリーは明日へのヒントを見つける場になるかもしれない。【野口由紀】 記者は4月に労働担当になり、足を運んだエル・おおさかで、館内表示の「ライブラリー」の文字に興味をそそられた。雑誌や書籍が棚いっぱいに並ぶ本の森の中、ぬいぐるみやキーホルダーなどの雑貨がバザー用品として並び、「運営のためにご寄付お願いします」と書かれた瓶まで。厳しい運営状況が伝わってくる。日を改めて谷合佳代子館長(63
習近平思想を「21世紀のマルクス思想」としてまつり上げる中国共産党が、不平等に立ち向かって労働者を支援する左派学生を弾圧する現実は、奇妙な問いを投げかける。習近平指導部が掲げるマルクス主義の旗と、大学生や労働者が掲げるマルクス主義の旗のうち、どちらが本物なのか。 沈夢雨が2018年夏、佳士科技の工場労働者の労組設立を支援する活動の中で撮った写真。シャツには「団結は力だ」と書いてある=微博より//ハンギョレ新聞社 2015年6月、沈夢雨(28)は中国南部に位置する広東省広州の名門、中山大学で数学・コンピューターを専攻し、修士号を取得した。最先端の情報通信(IT)企業に就職し、華やかな生活を送るには十分なスペックだった。彼女が選んだ道は、工場労働者だった。沈夢雨は「瞬間の興味のためではなく、私の人生の旅路に深く根ざした選択」と語る。 彼女は、大学でサークル活動に参加したことで労働者の現実に目覚
労働運動で培った女性たちのネットワークについて語る柚木康子さん。打ち合わせや資料作成に使う「スペースきんとう」は会社との争議の和解金を元にした基金で用意した女性たちの会議室だ=東京都文京区で2020年2月、大和田香織撮影 パートや派遣の雇い止め、セクハラ・マタハラ、賃金差別――。職場の問題で声を上げる女性たちの中には、ほぼ常に柚木康子さん(72)の姿がある。労働組合の委員長を務めながら多くの訴訟で原告を支援し、男女賃金差別を明らかにして女性が昇格する道も切り開いてきた。正規・非正規の格差をなくす均等待遇のキャンペーンや、国連の女性差別撤廃条約に実効性を持たせる運動へと活動は広がっている。【大和田香織/医療プレミア編集部】 「普通の女の子」から「男も女も育児時間」へ ――1966年に外資系企業のシェル石油(現・出光興産)に入社したときは、どんな職場でしたか。 ◆本社では女性がお茶くみをさせら
東京・有楽町の日本外国特派員協会で記者会見をする、スミフルのバナナ梱包工場の労働組合のポール・ジョン・ディゾン委員長ら(2019年6月18日、FoE Japan撮影) スミフル(旧・住商フルーツ)がフィリピン南部のミンダナオ島で経営するバナナ梱包工場で、ストライキに参加した労働者ダニー・ボーイ・バウティスタさん(当時31)が殺されてから1年。国際NGO「FoE Japan」が「甘熟王」などスミフルブランドのバナナの不買運動を呼びかけている。フィリピン人労働者らは2018年10月、工場で使う化学薬品による健康被害や違法な請負雇用などの労働条件の改善を求めるストライキを決行。これに参加した約700人の労働者が不当解雇されていた。 ■暴力・放火・殺人 FoE Japanが10月31日から呼びかける「スミフルバナナ・ボイコット!キャンペーン」は、ちょうど1年前にストライキに参加したダニーさんの殺害
一昨日、佐野SA上り線の従業員の労働組合(以下、佐野SA労組)が、使用者である株式会社ケイセイ・フーズが「組合つぶし」(労組法上の「不当労働行為」)を行っているとして、栃木県労働委員会に不当労働行為救済申し立てを行った。 佐野SAは今年の夏にストライキで大きな話題となったが、いまだに労使紛争が続いている。佐野SA労組によれば、その原因が会社側の違法な「組合つぶし」にあるというのだ。 実は、労働組合法では使用者側から労働組合に介入し、例えば金銭を支払って脱退を迫るなどの行為を禁止している。会社の組合への介入が禁止されていることや、それがどの程度であるのかは、ほとんど知られていないだろう。 そこで本記事では、佐野のSA労働者たちの申し立ての内容を紹介しながら、どのような行為が「組合つぶし」として法律で禁止されているのかを説明していきたい。 なぜ佐野SAでストライキが起きたのか 改めて、今回のス
都内でデモも計画されていた ストライキ中の従業員に給与を支払うために、加藤氏は自費で準備した1500万円を組合に供託していたが、その資金が底を尽きてしまうのが9月20日あたりだった。さらに、21日からの三連休には、膠着した状況を打開しようと、東北道を管轄するNEXCO東日本本社(東京)前でのデモも計画されていた。実際に、従業員たちはデモで使う手作りのタスキやチラシ、ノボリまで用意していた。そんな追い詰められた状況に届いた朗報だった。 ストライキ終結の経緯について、加藤氏が説明する。 「ストライキ開始後、佐野SAの現場を取り仕切っていたのは、預託オーナー商法で社会問題となった企業の関係業者でした。その業者がサービスエリアのスタッフを募集していた。社会問題になった業者に、私たちの職場を“占拠”されたのです。彼らの豊富な資金力で持久戦に持ち込まれ、勝ち目はなくなりかけました。 そこまで追い込まれ
【上海=浅井正智】香港から中国本土に犯罪容疑者の移送を可能にする「逃亡犯条例」改正案が、十二日から立法会(議会)で実質審議に入るのを前に、香港の航空大手、キャセイ航空と関連会社のドラゴン航空の労働組合は十一日、抗議のストを予告するとともに、他の航空会社にもスト参加を呼び掛けた。実際にストが行われれば香港社会に甚大な影響が出るのは必至だ。 両社の労働組合は声明で、「香港政府は(改正反対の)民意を軽視しただけでなく、高圧的な手段で改正をゴリ押ししようとしている」と非難。ストを通じて、「政府に考えを改めるよう迫る」と主張した。十一日昼までに組合員千七百人余りがスト参加に署名したという。香港にある他の航空会社の労組にもスト実施を呼び掛ける方針を示し、「市民とともに政府に圧力をかけ、条例改正撤回を求める」としている。
今月8日、東京都内千代田区にある私立・正則学園高校で教員(私学教員ユニオンに加盟)がストライキを起こした。 同校では長時間労働や残業代不払いなどの違法状態が蔓延している。 それに加え、数十人の教員全員が理事長室の前の廊下に一列に並び、一人ひとり理事長に挨拶をするという「儀式」への参加が毎朝求められる。 そうした「ムダ」よりも生徒の指導を優先したいと、先生たちはストライキに踏み切ったのだ。こうした教員の動きには、社会的にも大きな支持が集まっている。 参考:「ブラック私学」でストライキ! 私学に蔓延する違法状態は改善できる だが、事態はいまだ収束しておらず、ストライキは継続しているという。いったい、どうして、労使間の対立は続いているのだろうか? 以下では、私学教員ストライキの「その後」について紹介しよう。 早朝の理事長への挨拶は強制でない? このストライキについての報道があった直後、学校法人側
attacこうとうはATTAC Japan(首都圏)のローカルグループです。グローバルな問題を地域から、ローカルな問題を世界的に考え、行動するグループです。 あと10日もすればメーデー。 そんなおり、昨日東西線・大手町のホームで「ベア!」と書かれた大きな広告を見かけた。 横山光輝の漫画『三国志』とタイアップした日経新聞の電子版広告「日経三国志」シリーズの一コマだ。 思わず途中下車して写真に収めた。どうやらという一般応募から作品を選ぶ「大喜利の乱」という企画の入選作らしい。こちらに他の入選作品と掲示されている駅が発表されている。 ベアは春闘の課題でメーデーの課題ではないとは思いつつも、この時期にこの広告とは「なかなかやるな」と思いながら、その前の日から日経新聞の一面で始まった「景気 試される波及力」という連載記事を思い出した。 連載の一回目は、「企業、過去最高の利益水準」と題して、景気回復の
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く