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ブックマーク / book.asahi.com (46)

  • ウエルベックと聴くニール・ヤング 冷笑よりも、素朴だが重要なメッセージ|じんぶん堂

    記事:白水社 筆禍に舌禍、テロ事件やコロナ禍まで、作家生活30年の集大成! ミシェル・ウエルベック著『ウエルベック発言集』(白水社刊)は、フランスきってのベストセラー小説家によるエッセイ集。 書籍情報はこちら ミシェル・ウエルベック(Michel Houellebecq:1956─)現代フランスを代表する小説家、詩人。[photo: Stefán Bianka – CC BY-SA 4.0] ニール・ヤング(Neil Young:1945─) カナダ出身のシンガーソングライター。スティーヴン・スティルスとともに「バッファロー・スプリングフィールド」や「クロスビー、スティルス&ナッシュ」に加入して活動したこともある。1969年にソロデビューしたのち、アルバム『ハーヴェスト』収録の「孤独の旅路」が大ヒットして高い評価を得る。写真はNeil Young and Promise of the R

    ウエルベックと聴くニール・ヤング 冷笑よりも、素朴だが重要なメッセージ|じんぶん堂
  • 「人生ミスっても自殺しないで、旅」諸隈元さんインタビュー 「死にたくない」に気づいて一変した日常|好書好日

    諸隈元(もろくま・げん) 1978年、静岡県浜松市生まれ。慶應義塾大学(入学直後、一般教養科目の「哲学」でヴィトゲンシュタインの存在を知ったが、彼が何を語っているのか全く理解できなかったため、哲学科に進もうとは全く思わずに)東洋史学科卒。在学中の2000年と卒業後の2015年、慶應大学プロレス研究会認定世界ヘビー級チャンピオン戴冠。2014年、文學界新人賞受賞(2021年現在も受賞第1作は未発表)。主ラーメン二郎(関内店)、趣味はピザ巡り旅、稲垣吾郎さん。 「自殺できるし」より「旅に出れるし」 ――を書くことになったのはあるツイートがきっかけだったそうですね。 ある時「人生ミスったら自殺できるし、と考えることで生きるのが楽になった」というツイートが流れてきたのを見て、とっさに『「ミスったら自殺できるし」よりも「旅に出れるし」のが良いと思う』とつぶやいたんです。 「人生ミスったら自殺で

    「人生ミスっても自殺しないで、旅」諸隈元さんインタビュー 「死にたくない」に気づいて一変した日常|好書好日
  • 「左派を再び偉大に」する処方箋 『ポスト新自由主義と「国家」の再生』日本語版への序文|じんぶん堂

    記事:白水社 左派が「ネオリベ」に抗するための基礎知識! ウィリアム・ミッチェル+トマス・ファシ著『ポスト新自由主義と「国家」の再生 左派が主権を取り戻すとき』(白水社刊)は、MMTの旗手による左派再興のための処方箋。 書籍情報はこちら 国民と、その代理人として幸福を増進する役割を果たすべき国家との関係は、ここ数十年で世界的に大きな変化を遂げた。この時期の特徴は、経済政策に関する政治的議論がほぼ完全に均質化したことである。経済問題に関して、保守(右派の)政治家の意見と伝統的な社会民主主義者の意見に違いを見出すことは、今や困難である。かつては、国家が資主義をどの程度制御するかという観点から定義される政治的な左右両派には明確な違いがあった。しかし、ここ数十年間で新自由主義イデオロギーが支配的になるにつれて、その違いは感じられなくなってしまった。 このような動きに伴ってさまざまな危機が出現した

    「左派を再び偉大に」する処方箋 『ポスト新自由主義と「国家」の再生』日本語版への序文|じんぶん堂
    kabutomutsu
    kabutomutsu 2023/06/21
    "彼らは、国家には絶大な力があることを分かっていたが、国民(と左派)には、国家にそんな力はないと信じるよう力説した"
  • 実用系雑誌『BIG tomorrow』の原点には、教養主義? 『「働く青年」と教養の戦後史』より|じんぶん堂

    記事:筑摩書房 original image: polepoletochan / stock.adobe.com 書籍情報はこちら 『BIG tomorrow』と「人生雑誌」 「一億円貯めた人の「お金が集まる環境」」「三〇代で年収一〇〇〇万円を達成した人たちの夜八時からの副業生活」(それぞれ2016年6月号・2014年6月号)──青春出版社発行の『BIG tomorrow』では、若手・中堅社会人層を対象に、これらの実利的テーマが多く扱われている。こうした誌面構成は、近年には限らない。1980年7月の創刊号では、「この処世術を心得なければ、きみはとり残される」「三つの周期リズムでギャンブルに必勝できる」といった記事が掲載されており、第2号(1980年8月)でも「大儲け、オレたちにとっても夢じゃない」と題したエッセイが収められていた。 この雑誌は、当初、28万部の発行だったが、1985年ごろに

    実用系雑誌『BIG tomorrow』の原点には、教養主義? 『「働く青年」と教養の戦後史』より|じんぶん堂
  • 非暴力のほうが革命は成功する! エリカ・チェノウェスさん(ハーバード大教授)|じんぶん堂

    記事:白水社 3.5%が動けば社会は変わる! エリカ・チェノウェス著『市民的抵抗 非暴力が社会を変える』(白水社刊)は、世界のすべての革命から「非暴力」の優位を分析。 世界中で話題をさらったハーバード大教授による現代革命論。社会を変革するための新たな方法論の邦初訳。 書籍情報はこちら 【著者動画:Erica Chenoweth - Civil Resistance and How and Why it Works | Snack Break with Aroop】 多くの事例はニュースの見出しにはならないが、過去10年間──2010年から2020年の間──は記録に残る歴史上のいかなる10年間よりも多く、世界中で革命的非暴力蜂起が発生した。実際、21世紀の最初の20年間で起こった非暴力抵抗キャンペーンの数は、20世紀〔の100年間〕に起こった数よりも多かった。アルメニアからスーダンまで、ベ

    非暴力のほうが革命は成功する! エリカ・チェノウェスさん(ハーバード大教授)|じんぶん堂
  • 読者が変えたベストセラー――『日本国紀』元版と文庫版を検証すると(後編)|じんぶん堂

    記事:幻戯書房 『もう一つ上の日史』と『日国紀』単行・文庫版 書籍情報はこちら 前回の続きです。 「前編」の最後で、私は、『もう一つ上の日史』に対する『[新版]日国紀』の反応を数え上げ、次のように書きました。 採用:300箇所以上 無視:100箇所以上 反論:50箇所以上 (……)(「採用」のカウントについては)助言の他、データの誤りの訂正、込み入ったニュアンスの反映、「〜である」という断言から「〜という説もある」といったトーンダウン、デマエピソードの完全削除、などを含んでいます。 今回はまず、「採用」の具体例をいくつか紹介しましょう。引用文による比較が続くので、記事として平板な印象を与えるかもしれませんが、よーく読んでいただければ、その影響がおわかりになると思います。 実際、どのように「修正」されているのか? さて、「助言」は前回挙げたので、「データの誤りの訂正」から。(以下、

    読者が変えたベストセラー――『日本国紀』元版と文庫版を検証すると(後編)|じんぶん堂
  • 読者が変えたベストセラー――『日本国紀』元版と文庫版を検証すると(前編)|じんぶん堂

    記事:幻戯書房 『もう一つ上の日史』と『日国紀』単行・文庫版 書籍情報はこちら 2021年11月17日、百田尚樹著『[新版]日国紀』(幻冬舎文庫)という(全二冊)が出版されました。三年前に出た同著者による『日国紀』というの文庫版で、カバーや帯、版元の公式サイトには「当代一のストーリーテラーによる日通史の決定版」「知られざる史実と感動の歴史秘話が満載」「満を持して、待望の文庫化!」「大増量150ページ!! 著者こだわりの超大幅加筆により新しく生まれ変わった、令和完全版!」などという、思わず胸が高鳴るような文言が並んでいます。 今年に入り、この文庫(以下「文庫版」)の刊行予告がアナウンスされて以来、私にはずっとその存在が気にかかってきました。というのは昨年(2020)、『もう一つ上の日史 『日国紀』読書ノート 古代~近世篇』『近代~現代篇』という、『日国紀』(以下「元版

    読者が変えたベストセラー――『日本国紀』元版と文庫版を検証すると(前編)|じんぶん堂
    kabutomutsu
    kabutomutsu 2021/12/22
    "読者は無料校正者なのか?…著者あとがきや、元版には全くなく文庫版で初めて記載された「主要参考文献」一覧などに、こうした読者の協働は一切、言及されていません"
  • 佐藤究さん「テスカトリポカ」インタビュー 暗黒の資本主義と血塗られた古代文明が交錯する、魔術的クライムノベル|好書好日

    佐藤究(さとう・きわむ)作家 1977年福岡県生まれ。2004年、佐藤憲胤名義の『サージウスの死神』が第47回群像新人文学賞優秀作となり、作家デビュー。しばらく純文学作家として活動した後、16年『QJKJQ』で第62回江戸川乱歩賞を受賞。佐藤究名義で再デビューを果たす。18年『Ank: a mirroring ape』で第20回大藪春彦賞と、第39回吉川英治文学新人賞を受賞。『テスカトリポカ』は前作以来約3年半ぶりとなる待望の新作。 コーマック・マッカーシーを指針として ――『テスカトリポカ』はメキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人バルミロ・カサソラが、潜伏先のジャカルタで日人臓器ブローカーと知り合い、神奈川県川崎市で心臓売買のための組織を作りあげていく……という衝撃的内容のクライムノベルです。前作『Ank: a mirroring ape』から約3年半ぶりの長編となりますが、執筆の経緯

    佐藤究さん「テスカトリポカ」インタビュー 暗黒の資本主義と血塗られた古代文明が交錯する、魔術的クライムノベル|好書好日
  • 「隠された奴隷制」書評 現代日本に生きる私たちもまた|好書好日

    隠された奴隷制 [著]植村邦彦 朱野帰子(あけのかえるこ)の小説に『わたし、定時で帰ります。』がある。テレビドラマ化され、こちらも話題になったが、作中で主人公は「定時に帰るは勇気のしるし」と口にする。バブル時代のCMのもじりだが、たしかに仕事を断って定時に帰るのは勇気が必要だろう。しかし、すべてを引き受けていればきりがない。自分の生活を守るためにも勇気を持って戦う必要がある。書では、今までと違う働き方を探ることもまた、「階級闘争」であると指摘する。 社会思想史を専門とする著者は、近代の自由の思想家たちが、いかに奴隷制の存在を自明視し、それに依拠して議論していたかを論証していく。奴隷を使用する農園を植民地に所有していたロックをはじめ、著者はモンテスキューやヘーゲルなどの議論を、そこに描かれている奴隷という視点から読み直していく。自由のために論じていたはずの思想家たちがなぜ、奴隷制に依拠して

    「隠された奴隷制」書評 現代日本に生きる私たちもまた|好書好日
  • 朝日新聞「平成の30冊」を発表 1位「1Q84」 2位「わたしを離さないで」 3位「告白」|好書好日

    1位 『1Q84』(村上春樹、新潮社、2009年) 『1Q84』はBOOK1・2が平成21年、翌年BOOK3が刊行された。夜空に二つの月が浮かぶ「1Q84年」の世界で、10歳で離ればなれになった青豆と天吾が再会するまでの物語。カルト教団も描かれたことで、高い注目を集めた。毎日出版文化賞。21年の年間ベストセラー第1位(日販調べ)で、単行・文庫の累計部数は約860万部。 京都大教授の中西寛さんは「平成時代において最も注目を集めた文芸作品。野茂英雄が野球の世界で行ったように、日語文学の世界性を意識させた」と解説する。コラムニストの堀井憲一郎さんは「平成時代は『村上春樹の時代』でもあった。この書籍に対する期待度と売れ具合は尋常ではなかった。日常生活でふつうの人が小説を話題にできた最後の作品だったかもしれない」と評価した。文筆家の青木奈緒さんも「平成の日の世相を描いた、平成を代表する小説」と

    朝日新聞「平成の30冊」を発表 1位「1Q84」 2位「わたしを離さないで」 3位「告白」|好書好日
    kabutomutsu
    kabutomutsu 2019/03/07
    "4位「観光客の哲学」(東浩紀、2017) " これは…
  • 「高い城の男」(フィリップ・K・ディック)|好書好日

    中川文人(なかがわふみと) 作家 1964年生まれ。法政大学中退、レニングラード大学中退。著書に『身近な人に「へぇー」と言わせる意外な話1000』(朝日文庫)、『地獄誕生の物語』(以文社)、『ポスト学生運動史』(彩流社)など。「ツァラトゥストラの編集会議」の構成担当。 斉田直世(さいだなおよ) イラストレーター・作家 書籍・雑誌・WEBを中心にイラストやマンガを執筆。著書に、『ちょいモテ男になる技術』『0点ママの子育て迷走日記』(共に幻冬舎)他多数。『みんなのギモンにこたえるモン』(共同通信社子ども新聞)、『銀行員は見た!』(マイナビニュース)等連載中。「ツァラトゥストラの編集会議」のイラスト担当。

    「高い城の男」(フィリップ・K・ディック)|好書好日
  • 「メイキング・オブ・アメリカ」「ブラック・ホークの自伝」書評 力=正義という信条を問う|好書好日

    メイキング・オブ・アメリカ 格差社会アメリカの成り立ち 著者:阿部 珠理 出版社:彩流社 ジャンル:社会・時事・政治・行政 メイキング・オブ・アメリカ―格差社会アメリカの成り立ち [著]阿部珠理 ブラック・ホークの自伝―あるアメリカン・インディアンの闘争の日々 [著]ブラック・ホーク オバマからトランプへ。ケニア出身の父を持つ初の黒人大統領から、排外的言動で世論を煽(あお)る白人「不動産王」大統領へ。アメリカ合衆国はしばしば、両極端ともいえる相貌(そうぼう)を見せる。いまアメリカ人の心性と、その成り立ちが、とても気になる。 アメリカは持たざる者にもチャンスがある自由の国といわれてきた。だが最初からアメリカ社会は不平等だった、と『メイキング・オブ・アメリカ』は明言する。このコンパクトな米国史概説で、アメリカ先住民研究を専門とする著者は、アメリカ植民地のゼロ地点を清教徒(ピューリタン)の新天地

    「メイキング・オブ・アメリカ」「ブラック・ホークの自伝」書評 力=正義という信条を問う|好書好日
  • 「幻の作家」山尾悠子さん1万字インタビュー 幻想小説というレッテルなら作家でいられるかも |好書好日

    文・写真 山崎聡 火が燃えにくくなった世界を舞台に、前半部「Ⅰ 飛ぶ孔雀」と、書き下ろしの後半部「Ⅱ 不燃性について」からなる連作長編。前半部の主舞台は、蛇行した川のなかにある川中島Q庭園。天守閣を借景とした4万坪の池泉(ちせん)回遊式庭園で真夏の大茶会が開かれ、多くの人々が集う。濃い緑の芝に緋毛氈(ひもうせん)と野だて傘。夜は電飾で一面が光の海と化し、パレードの楽隊が大音量で行進する――。散文詩のような文体でつづられる光景が、徐々に物語の予兆をはらむ。 ――『飛ぶ孔雀』の前半部は自身初めての文芸誌掲載でした。 私は40年ぐらい前に(執筆を)スタートした人間で、途中で育児休暇みたいなブランクが長かったりするんですけれども、とにかく40年前に世に出た時といまとは、まったく状況が違っていたんですよね。たまたまご縁があってSFの場所から出たのですけれど、ほぼ最初に書いた「夢の棲む街」がSF専門誌

    「幻の作家」山尾悠子さん1万字インタビュー 幻想小説というレッテルなら作家でいられるかも |好書好日
  • 「韓国映画史ー開化期から開花期まで」書評 なぜメロドラマ的哀調を帯びるか|好書好日

    韓国映画史ー開化期から開花期まで [責任編集]キム・ミヒョン 百年以上に及ぶ韓国映画史を10の時期に区分しながら、それぞれの時代の映画の特徴を論じてみたら、きっと面白い読む事典ができるに違いない。そんな意図から生まれたのが書である。その中でとくにわたしの興味をひいたのは、メロドラマ的な「新派映画」の項目である。というのも、生まれて初めて観(み)た韓国映画が、1968年のチョン・ソヨン監督の「憎くてももう一度」だったからだ。 それにしても、韓国映画はどのジャンルであっても、なぜこうもメロドラマ的な哀調を帯びているのか。わたしの中にずっとくすぶり続けてきた疑問だ。だが、それも書を読んで氷解した。メロドラマ的な感傷は、植民地と内戦、分断と軍政という、過酷なまでの歴史によって強いられた二律背反的な感情の発露だったのだ。他律的であるしかない主体が世界に対して抱く無力感と混乱、葛藤(かっとう)と煩

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  • コラム別に読む : コンドルセと〈光〉の世紀 科学から政治へ 永見瑞木さん - 石田祐樹 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    ■知によって権力を日々問い直す フランス革命の時代を生きた思想家コンドルセ。 これまでは、ルソーらに続く啓蒙(けいもう)主義者で、人間理性の無限の可能性を信じる「楽観的な進歩主義者」と見られることが多かった。 それに対して永見瑞木(ながみみずき)さんは、革命前からのコンドルセの政治構想を読み解き、一貫した問題関心で時代に対応した「漸進的な改革者」という新たな像を描いた。 なぜ、コンドルセなのか? 「私は移民の統合や、宗教と政治の関係といった現代の問題にも関心があります。フランスは、米英とは違う仕方で解決に当たっている。それを歴史的にさかのぼると、どういう思想の流れが描けるか。コンドルセは共和国を作った父とも言われ、共和主義を考えるには重要な人物だと思いました」 科学者として出発したコンドルセは、王政改革に協力し、政治に関わっていく。科学は専門家だけの知ではなく、新たな政治社会を作るのに不可

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  • 『「ウルトラセブン」の帰還』書評 試行錯誤繰り返し、時代刻む|好書好日

    「ウルトラセブン」の帰還 [著]白石雅彦 学生運動やベトナム反戦運動が高揚しつつあった1967年10月から68年9月にかけて、毎週日曜日に49回放送された子供向けのテレビ番組があった。「ウルトラセブン」である。 いまなお熱狂的なファンが多く、語り尽くされてきた感のあるこの番組を、著者は監修者の円谷英二の日記、新たに発見された脚家のノート、そして当時のスタッフへのインタビューなどを通して、一つひとつ丁寧に検証してゆく。その結果、私たちがテレビで目にすることができたのはあくまでも完成作品のみであり、そこに至るまでには想像を絶するほどの試行錯誤が繰り返されたこと、脚が完成しながら映像化されなかった幻の回も少なくなかったことが明らかになる。 最も多く脚を手掛けたのはともに沖縄出身の金城哲夫と上原正三である。当時はまだ返還前だったが、著者はこの二人が書いた作品に沖縄からのまなざしを感じとる。例

    『「ウルトラセブン」の帰還』書評 試行錯誤繰り返し、時代刻む|好書好日
  • 本の記事 : 小説も料理も適量って難しい 柚木麻子「BUTTER」 - 中村真理子 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

  • 「人工地獄―現代アートと観客の政治学」書評 衝突、不和、政治性、みなアート|好書好日

    人工地獄―現代アートと観客の政治学 [著]クレア・ビショップ 絵や彫刻などモノの制作を目的化しない参加型アートは、日では芸術祭の興隆とともに注目されているが、世界的な傾向でもある。ただし、社会体制によって地域ごとに事情は異なり、また歴史をたどると、近代の初頭にたどりつく。書は、美術史家が壮大なパースペクティブをもって、参加型アートの系譜を掘り起こし、あまり知られていない数多くの事例を紹介しながら、20世紀美術のイメージを書き換えるような野心作だ。 時代の節目は政治的な事件と絡めながら、ロシア革命が起きた1917年前後の未来派、ロシアの集団制作、ダダ、68年に着地する状況主義ほか、89年以降の参加型アートの増加を論じ、60年代のアルゼンチン、東欧とロシア、イギリスのコミュニティ・アート運動などに目配りしている。 何よりも個別の事例が面白い。例えば、同じ席のチケットを10人に売ったり、椅子

    「人工地獄―現代アートと観客の政治学」書評 衝突、不和、政治性、みなアート|好書好日
  • 書評・最新書評 : 集団的自衛権の思想史 [著]篠田英朗 - 杉田敦(政治学者・法政大学教授) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    ■憲法と安保の「二重構造」を検証 憲法学者の宮沢俊義は、ポツダム宣言受諾で天皇主権から国民主権への「革命」が起こったとした。いわゆる「八月革命」説だ。だが、著者によれば、この説は、「実際の憲法制定権力者としてのアメリカの存在を消し去る」ことで、「表」の憲法と「裏」の日米安保という二重構造を正当化する役割を果たした。書は、こうした構造を思想史的に緻密(ちみつ)に検証しようとする。 戦後憲法学は、立憲主義を権力制限的にとらえ、自衛権を抑制的に解釈してきた。これに対し、著者は、人々が信託により安全確保の責務を政府に負わせることこそが立憲主義の根幹とし、昨年の安保法制をも必要な施策と評価する。 国際法上の概念である自衛権を、内閣法制局や憲法学者が憲法の側に引き寄せ、個別的自衛権と集団的自衛権とを厳密に区別したことが、著者からすれば、そもそも問題であった。 個別的自衛権を担う合憲な自衛隊と、基地を

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  • コラム別に読む : 南米「棄民」政策の実像 遠藤十亜希さん - 坂尻信義 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    ■日系人の功績知り、五輪見て 研究調査で訪れたブラジルの日系人街で「七夕祭り」を見た。宮城県人会を中心とした日系人が主催したもので、浴衣姿で盆踊りを楽しみ、風鈴売りの屋台や短冊飾りでにぎわう光景を、いまも鮮明に覚えている。 南米の日系人を研究テーマに選んだのは、15年間のニューヨーク暮らしで「他者のまなざし」を意識するようになったから。その「他者」とは「他ならぬ〈日〉だった」と、あとがきに書いた。国から派遣された日のエリートから、現地に根づいた日人を異質なものとして区別する視線を感じたという。テキサス大やコロンビア大で研究を重ね、博士号を取得。いまはハワイで教壇に立つ。「境遇や価値観の違いで同じ国民を内と外に差別化する意識が日政府にはある」と、海外でキャリアを積んできた経験を踏まえて思う。 移民の歴史が100年を超えるブラジルの日系人社会は、4世や5世も含めて200万人に迫る。い

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