魔の海域 季節は10月 本マグロ(クロマグロ)が黒潮の海流と共に、金華山沖にやってくる時期だ。 金華山とは、宮城県石巻市、牡鹿半島の先端の太平洋上に浮かぶ島のことである。 島全体が黄金山神社の神域となっており、地場の信仰の対象として有名な土地だ。 僕の乗った船は、和歌山県那智勝浦町を出港し、一路金華山沖を目指した。 近海操業になるため、出港した翌日にすぐに操業のスタンバイをする。 いつ縄をはえても良い、準備をしておくのだ。 目指すは「海の黒いダイヤ」と呼ばれる本マグロのいる海だ。 南方海域に比べ、10月の三陸沖は少し肌寒い。 気候も全く違う、まず湿気が違う。肌にまとわりつくような、空気の重さも感じない。 陸から直線距離にして20〜40マイル程しか離れていないため、風にのって土の香りがする。 そして、波の形と威力だ。 南方海域の波の形を表現すると、波の幅が狭く尖っている。 低気圧の中に入り、