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ブックマーク / honz.jp (64)

  • 『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス - HONZ

    『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス いまからおよそ1万年前、人類は農業を発明した。農業が生まれると、人びとは必要な栄養を効率的に摂取できるようになり、移動性の狩猟採集生活から脱して、好適地に定住するようになった。そして、一部の集住地域では文明が興り、さらには、生産物の余剰を背景にして国家が形成された──。おそらくあなたもそんなストーリーを耳にし、学んだことがあるだろう。 しかし、かくも行き渡っているそのストーリーに対して、書は疑問符を突きつける。なるほど、初期の国家はいずれも農業を基盤とするものであった。だが、人類はなにも農業を手にしたから定住を始めたわけではない(後述)。また、メソポタミアで最初期の国家が誕生したのは、作物栽培と定住の開始から4000年以上も後のことである。それゆえ、「農業→定住→国家」と安直に結び

    『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス - HONZ
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    kamayan 2020/01/04
  • 『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』誘惑に勝てないのは意志が弱いせいじゃない - HONZ

    スティーブ・ジョブズは自分の子供たちにiPadを使わせていなかった――彼はその影響力をもって世界中に自社のテクノロジーを広める一方で、プライベートでは極端なほどテクノロジーを避ける生活をしていた。デジタルデバイスの危険性を知っていたから。彼だけでなく、IT業界の大物の多くが似たようなルールを守っている。まるで自分の商売道具でハイにならぬよう立ち回る薬物売人みたいではないか……。 そんなツッコミで幕を開ける書は、フェイスブックやツイッター、インスタグラム、ソーシャルゲームといったデジタルテクノロジーが持つ薬物のような依存性をわかりやすく噛み砕いて分析した一冊である。ネット依存を題材としたは他にもあるが、書が類書とちょっと違うのは、こうした依存症ビジネスを否定・糾弾するのではなく、人間心理への深い理解を促すことに重心が置かれている点だ。著者はニューヨーク大学の行動経済学や意思決定の心理学

    『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』誘惑に勝てないのは意志が弱いせいじゃない - HONZ
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    kamayan 2019/09/09
  • 『未来をはじめる 「人と一緒にいること」の政治学』で新しい未来をはじめるための第一歩を踏み出す - HONZ

    このは、東京大学社会科学研究所教授で政治思想史・政治哲学を専門とする著者が、東京都の豊島岡女子学園中学・高等学校で行った全5回の政治を考えるための講義を取りまとめたものである。大学教授による政治講義とはいっても、書は学生との対話形式で平易な語り口で進められるので、幅広い層の読者が楽しみながら読み通せるはずだ。書の魅力は分かり易さだけではない。著者は、政治思想史で重要な役割を果たした人物とその発想の根幹を解説していくことで、現代社会を取り巻くさまざまな社会問題を根から考えるために必要な知恵を与えてくれる。さまざまな政治や人間関係から無縁ではいられない大人にも、多くの発見がある。 政治とは結局、「人と一緒にいるということ」なのだと著者はいう。ホモ・サピエンス以外の類人猿や狩猟採集生活を送る人々を見ても分かるように、人類は誕生したそのときから砂粒の個人として生きてきた訳ではない。「人と一

    『未来をはじめる 「人と一緒にいること」の政治学』で新しい未来をはじめるための第一歩を踏み出す - HONZ
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    kamayan 2018/10/02
  • 『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』ロシア史上最悪の遭難怪死事件に挑む - HONZ

    一般に、は読めば読むほど物知りになれると思われがちだが、実際は逆だ。読めば読むほど、世の中はこんなにも知らないことであふれているのかと思い知らされる。その繰り返しが読書だ。 「ディアトロフ峠事件」をぼくはまったく知らなかった。これは冷戦下のソヴィエトで起きた未解決事件である。 1959年1月23日、ウラル工科大学の学生とOBら9名のグループが、ウラル山脈北部の山に登るため、エカテリンブルク(ソ連時代はスヴェルドロフスク)を出発した。 男性7名、女性2名からなるグループは、全員が長距離スキーや登山の経験者で、トレッキング第二級の資格を持っていた。彼らは当時のソ連でトレッカーの最高資格となる第三級を獲得するために、困難なルートを選んでいた。資格認定の条件は過酷なものだったが、第三級を得られれば「スポーツ・マスター」として人を指導することができる。彼らはこの資格がどうしても欲しかったのだ。 事

    『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』ロシア史上最悪の遭難怪死事件に挑む - HONZ
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    kamayan 2018/09/07
  • 『サルは大西洋を渡った──奇跡的な航海が生んだ進化史』 大海原という障壁を越えて進出する生物たち - HONZ

    「ありそうもないこと、稀有なこと、不可思議なこと、奇跡的なこと」。生物地理学者のギャレス・ネルソンはかつてそんな言葉でそれを嘲笑したという。だが実際には、どうやらそれは生物の歴史において何度も生じていたようだ。それというのは、生物たちによる長距離に及ぶ「海越え」である。 書が挑んでいる問題は、世界における生物の不連続分布である。世界地図と各地に生息する生物を思い浮かべてほしい。大西洋を挟んで、サルはアフリカ大陸にも、南アメリカ大陸にも生息している。また、「走鳥類」と呼ばれる飛べない鳥たちは、南半球の4つの隔たった地域に分布している。さらに、ガータースネークはメキシコ土で見られるが、そこから海で隔てられたバハカリフォルニア半島の南部にも生息している。 そのように、系統的に近しい多くの生物が、海などの障壁で隔てられた、遠く離れた地域に生息している。しかしそうだとしたら、彼らはいったいどうや

    『サルは大西洋を渡った──奇跡的な航海が生んだ進化史』 大海原という障壁を越えて進出する生物たち - HONZ
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    kamayan 2017/11/12
  • 『幻の惑星ヴァルカン』 それはいかにして「発見」され、いかにして葬り去られたのか - HONZ

    水・金・地・火・木・土・天・海・冥。かつてそう教えられた太陽系惑星のなかから、2006年に冥王星が除外されたことは記憶に新しい。だがじつは、19世紀後半にはそれら惑星候補のなかにもうひとつ別の名前が挙げられていた。書の主役は、その幻の惑星たる「ヴァルカン」である。 ヴァルカンはその生い立ちからして冥王星とは異なっている。というのも、そもそもそんな星は存在すらしていなかったからだ。では、存在しないものがいかにして「発見」され、そして最終的に葬り去られることになったのか。書は、その誕生前夜から臨終までを、関係する天文学者や物理学者にスポットを当てながら、ドラマ仕立てに描いていく。 ストーリーは、17世紀後半、ニュートン力学の登場から始まる。周知のように、その偉大なる体系は、惑星の運動を含む広範な現象の統一的説明を可能にした。いや、説明だけではない。驚くべきことに、その体系は未知の現象に対す

    『幻の惑星ヴァルカン』 それはいかにして「発見」され、いかにして葬り去られたのか - HONZ
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    kamayan 2017/11/10
  • 脳はいかにして現実を認識するのか──『あなたの脳のはなし: 神経科学者が解き明かす意識の謎』 - HONZ

    我々は”現実”をありのまま受け取っているわけではない。いったん視覚情報や触覚情報といった身体表面から情報を受け取り、それを脳で解釈することによってはじめて”人間用に最適化された、人間用の世界”を構築する。我々はある種のフィクションの世界を生きているわけだ。 と、大層な語りだしではじめたけれども、書はそうした現実の解釈機関である脳についての一冊だ。著者のデイヴィッド・イーグルマンは日でも『あなたの知らない脳──意識は傍観者である』で知られる神経科学者で、巧みな文章で脳科学の世界を紹介する伝達者である。書は著者が監修・出演した(世界で人気なのだ)BBCのテレビ番組の書籍版であり、「人はどうやって決断を下すのか」、「人はどうやって現実を認識するのか」など縦横無尽に語ってみせる。 書だけで脳科学が全てわかるわけではないが(そんな事はどんなでも無理だ)、分野の動向を概観し、入り口とするため

    脳はいかにして現実を認識するのか──『あなたの脳のはなし: 神経科学者が解き明かす意識の謎』 - HONZ
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    kamayan 2017/10/05
  • アメリカ海軍トップが見る世界 『海の地政学』 - HONZ

    著者の経歴から紹介しよう。 ジェイムズ・スタヴリディスは、1976年にアメリカ海軍兵学校を卒業し、35年以上を海軍軍人として過ごした。航空母艦エンタープライズなど、有名艦を軒並み指揮した後に、2009年から13年まで、NATO(北大西洋条約機構)の欧州連合軍最高司令官をつとめる。退役後の2013年からは、国際関係の研究では全米でもトップクラスを誇る私立の名門、タフツ大学フレッチャースクール(国際関係学の専門大学院で、卒業生は国連など国際機関にも多いそう)の学長に。 国際安全保障に関する論評を『ニューヨーク・タイムズ』『ワシントン・ポスト』などに寄稿し、編著作物としては、書で7冊目になるとか。現役時代にはTEDにも出てオープンソース・セキュリティについてトークしており、最近でも日経済新聞に有識者としてインタビューが出るなど、求められて発言する機会も多い。 ちなみに、ヒラリー・クリントンが

    アメリカ海軍トップが見る世界 『海の地政学』 - HONZ
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    kamayan 2017/09/17
  • 『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』自分がいま立っているその足元から発せられる言葉 - HONZ

    保育園に子どもを迎えに行っていた頃、保育士が毎日のように子どもがこしらえたすり傷やたんこぶなどについて懇切丁寧に説明するのに面らった。 「すべり台を降りた瞬間にお友だちとぶつかって……」、「ボールを追いかけていて転んで……」といった具合。こちらは田舎の野山を駆けずり回って育ったくちだ。子どもなんてケガするのが普通と呑気に構えていたものだから戸惑いを覚えてしまったのだ。 だがある時、それには理由があるのだと保育士経験のあるママ友が教えてくれた。ひとつはちょっとしたケガにもクレームをつける親(いわゆるモンペ)がいるから。予想外だったのはもうひとつの理由。間違っても保育士の虐待なんかでできた傷ではありませんよ、ということをアピールしているというのである。そんな可能性を毛ほども考えたことがなかったので、これにはびっくりした。 英国在住20年余、保育士をしながら英国社会の矛盾を鋭く突いたコラムなど

    『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』自分がいま立っているその足元から発せられる言葉 - HONZ
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    kamayan 2017/08/12
  • 『世界からバナナがなくなるまえに 食糧危機に立ち向かう科学者たち』 ロペスのハチ、チョコレート・テロ、現代版ノアの箱舟 - HONZ

    『世界からバナナがなくなるまえに 糧危機に立ち向かう科学者たち』 ロペスのハチ、チョコレート・テロ、現代版ノアの箱舟 バナナがなくなってしまうだって!? 多くの人にとっては寝耳に水であろうが、しかしこの話、けっしてありえないことではないようである。 現在、人々が口にしているバナナは、その大半が単一の品種、すなわちキャベンディッシュバナナである。そしてそのバナナには、遺伝的な多様性がまったくない。というのも、キャベンディッシュは種子がなく、株分け(新芽を移植すること)をとおして栽培されるからである。それゆえ、「キャベンディッシュバナナはすべて遺伝的に同一であり、スーパーで買うバナナのどれもが、隣に並ぶバナナのクローンなのである」。 だがよく知られているように、そうした遺伝的多様性の低い生物は、天敵などの影響をもろに受けやすい。実際、かつて人々が口にしていたバナナ(グロスミッチェル種)は、「

    『世界からバナナがなくなるまえに 食糧危機に立ち向かう科学者たち』 ロペスのハチ、チョコレート・テロ、現代版ノアの箱舟 - HONZ
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    kamayan 2017/07/26
  • 『火あぶりにされたサンタクロース』12月25日の知的興奮 - HONZ

    サンタクロースが、昨日午後、ディジョン大聖堂の鉄格子に吊るされたあと、大聖堂前の広場において人々の見守るなか火刑に処された。この派手な処刑は、教区若者組に所属する多数の子供たちの門前でおこなわれたのである。この刑の執行は、サンタクロースを教会の横領者にして異端者として<有罪>の判決を下した聖職者の同意のもとに決定された。 サンタクロースはキリストの降誕祭を異教化し、鳩のようにおとなしそうな顔をしながら教会のなかに居座って、ますます大きな顔をするようになったとして非難されたのである。 これは虚構のニュースではない。まるで虚構新聞の記事のようだが。1951年のクリスマス・イブにフランスで起こった事件であり、その日のうちに全国に報道された。この事件にふれなかった新聞はひとつもなかった。 しかし、問題の核心に触れ、正面からそれに答えようとした新聞はなかった。サンタクロースの実在を信じることはいいこ

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    kamayan 2017/01/28
  • 『寿命図鑑 生き物から宇宙まで万物の寿命をあつめた図鑑』ブラジャーの寿命は、本当に13ヶ月なのか? - HONZ

    ブラジャーについて知りたくてたまらない。齢46にしてこんなにもブラジャーのことが気になるとは思わなかった。きっかけは子どもの素朴な疑問である。 「ねぇ、ブラジャーの寿命ってなんで13ヶ月なの?」 その時、子どもが夢中になって読んでいたのが、『寿命図鑑』 絵・やまぐちかおり 編著・いろは出版(いろは出版)である。 この『寿命図鑑』は、人間や動物、建築物、機械、天体など13カテゴリー、324アイテムの寿命とそれにまつわるエピソードをまとめた図鑑だ。 ユニークで楽しめるのはもちろんのこと、そこはかとない無常観も感じられて、読み始めると大人もハマってしまう図鑑である。 なにしろ冒頭の「動物の寿命」からして、子どもにとっては衝撃的なようだ。ハツカネズミのかわいいイラストとともにいきなり「寿命1年」と出てくるのだから。 「ぼくの心臓はちいさい」と見出しがあって、「哺乳類は、小さな動物ほど心臓の音が速く

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    kamayan 2017/01/28
  • えっ!ウチと違う!? 『お雑煮マニアックス』 - HONZ

    初のお雑煮のムックである。著者の粕谷浩子さんは、お雑煮が好きすぎて、各地のべ比べレトルトパックの会社を立ち上げた情熱の人だ。その道のりは我々が想像するより、ずっと険しいものだった。お雑煮はレストランなどに無いため、粕谷さんは「地元の人と銭湯で仲良くなる作戦」などを駆使して、奥深いお雑煮の世界を丹念に調べていくしかなかったのだ。47都道府県のお雑煮を一挙に紹介した書は、そんな努力が結実した日文化史上の記念碑的作品である。 私はイベントや出版企画をまとめる仕事をしていて、その過程で、家でゴキブリを飼育してべる女性や、古墳が大好きなシンガーソングライターさん、鉄工所を営むかたわらエスカルゴの養殖をされている方など、多くの面白い方々とお会いしてきた。粕谷さんは、その中でも対象物に向けられた情熱のピュアさ加減が、ほんとに、ズバ抜けた人なのだ。初対面で、これは普通じゃないと私は感じた。

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    kamayan 2016/12/12
  • 『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法』 - HONZ

    書の著書、ヴァン・デア・コークはエピローグの冒頭で、次のように書く。 「私たちの社会は今、トラウマを強く意識する時代を迎えようとしている」 書は、凡百のトラウマに関する啓発書とはちがう。書は、自伝的な要素を有し、著者の精神科医としての、そしてトラウマに関する世界的な研究者としての歩みがそのまま記されている。オランダ系移民であるヴァン・デア・コークの父親は、ナチスに対し批判的であったがためにナチスによる投獄を経験し、母親は幼児期のトラウマの経験を持つことが暗示され、家族の中に深いトラウマがあったことが開示される。彼の歩みは、トラウマの再発見から始まる、今日のトラウマ研究の歴史そのものなのだ。 1978年、駆け出しの精神科医であったヴァン・デア・コークが、ベトナム戦争の帰還兵が示す凄まじい後遺症に圧倒され、トラウマのもたらす多岐にわたる脳への影響に気付くところから書は始まる。トラウマに

    『身体はトラウマを記録する 脳・心・体のつながりと回復のための手法』 - HONZ
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    kamayan 2016/11/06
  • 『本当はひどかった昔の日本 古典文学で知るしたたかな日本人 』文庫解説 by 清水 義範 - HONZ

    私は、大塚ひかりさんには恩を受けている。大塚さんの仕事の中に、ひとりで全訳をした『源氏物語』(ちくま文庫)があるのだが、そののおかげで私は初めて『源氏物語』の全巻を読み通すことができたのだ。 それより前には、いろんな作家の現代語訳で挑戦したのに、ついにすべてを読み通すことができなかった。谷崎潤一郎訳では、全10巻のうち第1巻(「若紫」まで)しか読めなかったし、その後、円地文子訳でも、瀬戸内寂聴訳でも読もうとしたのだが、半分くらいまでで挫折してしまっていたのだ。『源氏物語』を通読するのは私には無理なのかと思ったくらいだ。 ところが、年を取って図々しくなっている私は、よくわかっているような顔をして『源氏物語』について、解説するようにしゃべったりしていた。あの物語の中のヒロインたち何人かを題材にして大いにパロディ化してみた『読み違え源氏物語』(文藝春秋)という短編集まで出しているのである。ある

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    kamayan 2016/09/01
  • 『「日本スゴイ」のディストピア 戦時下自画自賛の系譜』最近、再び増殖中 - HONZ

    「ディストピア」とはユートピアの反対語。理想郷じゃない場所のことだ。「日スゴイ」ならユートピアなんじゃないの?と思いながら読みはじめると、戦時下に行われたプロパガンダによって洗脳された日人の姿に戦慄させられる。言葉の力は強大だ、プラスに働いてもマイナスでも。 書には昭和初期から終戦までに出版された、当時の「日スゴイ」の中から「日主義」「礼儀」「勤労」など、現代にも通ずる日礼讃キーワードごとに、膨大なを吟味していく。こんなことが大真面目に語られていたかと驚くばかりである。 そもそも「日スゴイ」のネタの原型はどこにあるのか。探っていくと見つかったのは週刊新潮の版元、新潮社が出していた月刊総合雑誌「日の出」であったのだ。 満州事変を契機とする日の国際連盟脱退を受けた「日の出」1933年10月号には「世界に輝く日の偉さはこゝだ」という特別付録が付いていた。地球上に全く孤立無援

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    kamayan 2016/08/07
  • 『脳が壊れた』ルポライター41歳、脳梗塞になりました! - HONZ

    健康診断を怠っている。フリーランスになってからというもの、よっぽど具合が悪くなければ医者に行くということもない。しかし、自分の健康を過信しているわけでもない。物忘れがひどければ「若年性の認知症?」と怯えるし、動悸が激しければ「心筋梗塞?」と脈を計る。手足が痺れると「脳梗塞」を疑い、しばらく様子を見たりする。 一般的には60歳以上に多いという脳梗塞。しかし鈴木大介は41歳で発病した。 ノンフィクション好きなら、この鈴木大介という名前に見覚えがあるかもしれない。貧困家庭の子どもや虐待などから家出した少年少女、そのセックスワークや集団詐欺など一般社会から早い年齢で零れ落ちた人々を丁寧に取材しているルポライターである。過去、私も何冊か読んで書評をしたこともある気骨あるルポライターだ。 社会が注目している分野であり、仕事の依頼も多く多忙を極めていた2015年の初夏、地元の消防団の消火訓練中、左手指

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    kamayan 2016/07/13
    ルポライター魂
  • 史上最強のナード──『最初のRPGを作った男ゲイリー・ガイギャックス〜想像力の帝国〜』 - HONZ

    君は『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(Dungeons & Dragons :以下D&D)を知っているか。 D&Dは紙と鉛筆とサイコロ、世界観や数値が記載されたルールブック、それに自身の想像力/対話を駆使して複数人で行うテーブルトークアールピージー(以下TRPG)である。1974年に発売された作は世界中で流行し、プレイヤーが冒険者になりきってファンタジー世界を探索する世界初のロールプレイングゲームと呼ばれる。数えきれないほど多くのクリエイターが作から受けた影響を表明しており、TRPGをやったことがなくともD&Dの名は知っている人も多いだろう。 ゲイリー・ガイギャックスはこのD&Dを生み出した人物であり、書はそんな偉大な男の伝記である。これがもう、めちゃくちゃおもしろい。その人生は波乱万丈。幼少期からゲームにのめり込んで高校は中退、仕事ゲームをやっていてクビになる。独創的なゲーム・アイデ

    史上最強のナード──『最初のRPGを作った男ゲイリー・ガイギャックス〜想像力の帝国〜』 - HONZ
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    kamayan 2016/07/06
  • 『殺人犯はそこにいる』「真犯人」の存在を明らかにした "調査報道のバイブル" 文庫解説 by 牧野 洋 - HONZ

    徹底した「調査報道」のスタイル 調査報道のバイブル──。書を読み終え、こんな表現がぴったりではないかと思った。 正直に言うと、民放テレビ業界については「そこは報道ではなくエンターテインメントの世界」と見下していた。そのため、メディア業界を取材するなかでも、ジャーナリズムという視点からこの業界を観察したことがなかった。書の著者が民放テレビ局の記者だと知り、自分の無知と思い込みを恥じた次第だ。 書は、足利事件をはじめ北関東で起きた一連の事件を「北関東連続幼女誘拐殺人事件」としてとらえ、真犯人「ルパン」に迫るルポだ。すでにテレビ報道を見たり雑誌記事を読んだりして、この事件の概要を知っている人も多いだろう。だが、一つの物語としてまとめて読むべきである。 なぜなら、事件の大きさはもちろんのこと、ジャーナリズムが来担うべき機能について考えさせられるからだ。著者は事件の全容を描きつつ、自分自身が

    『殺人犯はそこにいる』「真犯人」の存在を明らかにした "調査報道のバイブル" 文庫解説 by 牧野 洋 - HONZ
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    kamayan 2016/05/29
  • 『中国メディア戦争 ネット・中産階級・巨大企業』 親指は自由になりたがる - HONZ

    中国の報道はプロパガンダ一色だから、人々は真実を知らないーーそう思われている方も多いかもしれない。だがそれは、ある意味では正しく、ある意味では間違っている。 微博(weibo)で活躍する知識人たちが当局から狙い撃ちされ、新聞記事は編集部も知らぬ間に校了後に差し替えられる。そんな締め付けが露骨に行われる一方で、高速鉄道事故の様子が微博で生中継され、テンセントが運営するWeChatでは、「網紅(ワンホン)」と呼ばれる人気者たちが新しい文化をつくり上げる。このような極端な両面を併せもつのが、中国のメディア事情なのだ。 中核を担うのは、「中産階級」と呼ばれる人たちである。彼らは頭脳労働を伴うホワイトカラーの人々であり、一定の資産額を保有し、消費も謳歌する。その数3億人とも言われる中産階級は、インターネットの可能性と経済発展がもたらしてくれる新たな時代へのキャスティングボードを担う存在と言えるだろう

    『中国メディア戦争 ネット・中産階級・巨大企業』 親指は自由になりたがる - HONZ
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    kamayan 2016/05/12