2017年7月9日、福岡県の沖ノ島とその関連遺産の世界文化遺産登録が決定した。 登録直前の状況については、ニュースなどでご存知の方も多いだろう。日本が申請した資産に対し、ユネスコの諮問機関イコモスは一部だけの登録を勧告した。だが、ポーランドでの世界遺産委員会で勧告がくつがえされ、申請したすべての資産が登録されることになったのである。 勧告をくつがえしての登録は、関係機関・関係者の運動が結実したものであり、大きな成果と言って良い。他方で、歴史や伝統文化をめぐる学術・観光・政治のバランスという点では、今回の一連の動きは一考に値する。 欧米と異なり、世界遺産はアジアでは絶大なブランド力を持つ。日本でも世界遺産に登録されたとなれば、とりあえずは人が集まる。そのため、世界遺産登録それ自体が目的となるような状況すら生まれている。 世界遺産制度の理念 そもそも世界遺産制度はどのような理念の下に作られたの