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ブックマーク / blog.goo.ne.jp/jchz (19)

  • 講演・契丹!草原王朝はこんなに凄かった(芸大美術館) - 見もの・読みもの日記

    ○東京芸術大学大学美術館 講演会『契丹! 草原王朝はこんなに凄かった』(講師:市元塁、7月21日14:00~) 同館で始まったばかりの『草原の王朝 契丹-美しき3人のプリンセス-』(2012年7月12日~9月17日)の見どころを紹介する記念講演会。私は、2011年秋に、この展覧会が見たくて九州国立博物館まで行ってきた。九博が開館以来、6年かけて準備してきたというだけあって、熟成した「愛情」の感じられる、気持ちのよい展覧会だった。この日は、九博研究員の市元さんの講演が聞きたくて出かけた。 開始時間にちょっと遅れて会場に入ったら、いきなり「広開土王碑碑文では…」という講師の声が聞こえて、えっと耳を疑った。永楽5年(395)条にある「稗麗」は契丹のことだと話している。そんなに早い記録が残っているとは…。 一般に「契丹」という名称が歴史に登場するのは、907年あるいは916年の耶律阿保機による建国

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  • 暴走する敵意/中華人民共和国誕生の社会史(笹川裕史) - 見もの・読みもの日記

    ○笹川裕史『中華人民共和国誕生の社会史』(講談社選書メチエ) 講談社 2011.9 こんな中国史が書けるのか。しかも日人に!という驚きの1冊である。中華人民共和国誕生(1949年10月)直前の中国基層社会の様相を、徹底して「普通の人々」の側から描き出す。よくある中国近代史に登場する、共産党や国民党の領袖の名前は、一度たりとも現れない。 「定点カメラ」は、中国内陸部、四川省の民衆の間に据え付けられている。なぜ四川省か? ここには、日中戦争期に国民政府の戦時首都となった重慶があり、最も重い戦時負担を強いられた地域だった。続く国共内戦期にも、国民政府の最後の拠点となって、難民・兵士・政府官僚の糧を支え続けた。最後は疲弊しつくしたとは言いながら、信じられない生産力である。孔明が目をつけただけのことはあるなあ、なんて、とんでもなく時代違いな感心をしてしまった。 書の叙述は、1945年8月10日

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  • 和漢の美学/書跡の美(五島美術館) - 見もの・読みもの日記

    ○五島美術館 開館50周年記念名品展II『書跡の美-古写経・古筆・墨跡』(2010年5月15日~6月20日) 名品展第2弾は書跡。会場に入るとすぐ、壁沿いの展示ケースに3種の軸が並んでいる。伝・小野道風筆「継色紙」(重文)、伝・藤原行成筆「升色紙」、伝・紀貫之筆「寸松庵色紙」(重文)。至高の古筆と称えられる三色紙(→Wiki)である。 三色紙が並んだところを見るのは、意識している限り、三度目だ。2009年、三井記念美術館の『三井家伝来 茶の湯の名品』。それから、レポートを書いていないのだが、この連休、大阪で見てきた藤田美術館の『歴史を彩る 教科書に載る名品』展にも三色紙が出ていた。三井家の三色紙は、作品とともに表具の美しさにも目を奪われた。藤田美術館は、せっかくの三色紙の距離が近すぎて、しかも他の作品と一緒の展示ケースに入っていたので、印象散漫で残念な感じがした。五島美術館の場合は、ほどよ

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  • 「地上の楽園」の現実/北朝鮮帰国事業(菊池嘉晃) - 見もの・読みもの日記

    ○菊池嘉晃『北朝鮮帰国事業:「壮大な拉致」か「追放」か』(中公新書) 中央公論新社 2009.11 私の場合、そもそも「在日コリアン」という問題系を意識したのは、90年代以降ではないかと思う(遅っ!)。であるので、1959年から84年まで、四半世紀にわたって続いた「北朝鮮帰国事業」についても、その存在を知ったのは、ごく最近のことだ。書は、「北朝鮮による壮大な拉致」、いや「日政府による厄介払い」という具合に評価の錯綜するこの問題を、起源にさかのぼって丁寧に、客観的に論じた労作である。 私が書から学んだこと(再認識したこと)を挙げていこう。まず、在日コリアンが渡日した要因は(1)生活難(2)留学など(3)戦時動員(4)前記三者の家族として、の4パターンに大別される。(3)に関して「強制連行」があったことは事実だが、戦後の在日社会において(3)の比率は1割程度に過ぎないという。また、渡日者

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  • 夢に続く道/聖地寧波(奈良国立博物館) - 見もの・読みもの日記

    ○奈良国立博物館 特別展『聖地寧波―日仏教1300年の源流~すべてはここからやって来た~』(2009年7月18日~年8月30日) 古来、日中交流の窓口であった港湾都市・寧波(ニンポー)には、むかしから関心があったが、初めて訪ねることができたのは、2007年のこと。ただし諸事情あって、天童寺や阿育王寺を観光できなかったことは、返す返すも悔やまれる。勤め人はつらいのだ。でも普陀山も行ったし、天台山も行った、という日人は(僧職でなければ)あまり多くないと思う。 すっかり頭の中を中華モードにして会場に飛び込んだが、冒頭を飾るのは、国内所蔵の名品。赤い唇が慕わしい兵庫・一乗寺の最澄像(平安時代)、初めて見る岐阜・長瀧寺の善財童子立像(図録解説によれば、南宋時代→ということは、中国で造られ、請来されたということか!)など。博多遺跡出土の銅銭にパスパ文字を見つけたときは、昨日(京博:シルクロード 文

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  • 老境に入る/月とメロン(丸谷才一) - 見もの・読みもの日記

    ○丸谷才一『月とメロン』 文藝春秋 2008.5 雑誌『オール読物』2006年6月号から2007年9月号に連載されたもの。『双六で東海道』の続き。文中、歴史学者・服部之総のエッセイを紹介する段で、「戦前の随筆は無内容であったが」「戦後のそれは内容がなければ読んでもらへなかった」と書いている(正確には、むかし、そのように書いたことがある)という箇所を読んで、にやりとしてしまった。上記の引用の間には「ただし内田百間のそれは無内容の極を内容に変じた恐るべき芸」というカッコ付きの注釈が入る。 私は「無内容の極」内田百間のエッセイが大好きだが、同時に「内容(知識)の極」みたいな丸谷エッセイも大好きである。丸谷エッセイのネタは、ほとんど読書から成っているが、その博捜ぶりも「恐るべき芸」と言っていい。今回、感銘を受けたのは、音楽学者・小泉文夫の『人はなぜ歌をうたうか』。首狩り族の音楽を調査するため、その

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  • よみがえる国芳の色/錦絵はいかにつくられたか(歴博) - 見もの・読みもの日記

    ○国立歴史民俗博物館 企画展示『錦絵はいかにつくられたか』(2009年2月24日~5月6日) 江戸のメディア・出版文化を考える上で外せない「錦絵」の企画展。「錦絵の鑑賞に重きをおく美術展ではなく、"流通"と"世相"さらに"技術"に焦点を当てて」考えるというテーマ設定が、歴博らしくていい。 冒頭では、三代歌川豊国の『今様見立士農工商 商人』に描かれた絵双紙屋の店先に並べられた錦絵を、これは役者絵、これは名所絵、という具合に分類・分析し、さらに、よく似た実在の作品を提示している。錦絵に残された情報量って馬鹿にならない、と木下直之先生もおっしゃっていたっけ。『藤岡屋日記』など、江戸の日記・随筆に見る、錦絵出版の記事も面白かった。よく売れたものもあれば、作り手がねらったほどには売れなかったものもあるんだなあ。 いちばん興味深かったのは、同館が昨年度入手したという、大量の版木である(→北日新聞:2

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  • 【3日目】尉遅敬徳の墓誌 - 見もの・読みもの日記

    昭陵博物館にて。尉遅敬徳(うっちけいとく)の墓誌(の蓋の拓)。体の墓誌もあって、感激した。文字は、空海も唐で学んだ飛白体。唐太宗・李世民はあまり好きでないんだが、彼に仕えた武将たちは、逸話が多くて好きなんだな~。

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  • 絵で見る明治/聖徳記念絵画館 - 見もの・読みもの日記

    ○明治神宮外苑 聖徳記念絵画館 http://www.meijijingugaien.jp/art-culture/seitoku-gallery/ 神宮の森に位置する絵画館は、一見、堅固な要塞のような建物である。中に入ったことのある人は少ないに違いない。私も最近まで、公開されている施設なのかどうか知らなかったくらいだ。一度入ってみようと思い始めて、先週、たまたま上記のサイトを見たら、”壁画6作品を修復の為、取り外します”というお知らせが上がっていた。5/29に取り外される3作品は10月中旬まで戻ってこない。そうと分かると、急に見ておきたくなった。 日曜の午後、入場券を買って、人影のない入口をくぐり、大理石に囲まれた、広壮なエントランスホールに息を呑む。この建築だけで、一見の価値があると思う。左右には、日画40点、洋画40点を備えた画廊が連なる。明治天皇の生誕から崩御、大喪までを年代順に

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  • 初音ミクの歌う曽根崎心中 - 見もの・読みもの日記

    ○ニコニコ動画:初音ミク+鏡音リンの『曽根崎心中』 http://www.nicovideo.jp/watch/sm3081358 このブログを始めた頃は、読書よりも、ネット上の面白いものを探してまわるのが、最たる暇つぶしだった。最近はまた、を読むほうが楽しくなっているが、久しぶりに見つけた、ネットの上の面白いもの。 いちおう説明しておくと、「初音ミク」というのはVOCALOID(ボーカロイド=リアルな人の歌声を合成できるソフト、音声合成エンジン)の一種である。メロディと歌詞を入力することで人の声を元にした歌声を合成することができる。クリプトン・フューチャー・メディア社は、音声ライブラリ・データに声優を起用し、アニメ風のイメージキャラクターを用意することで、絶大な人気を博した。これが「初音ミク」であり、「鏡音リン・レン」(男女の双子?)である。 上記の動画は、2人の女性ボーカロイドに『曽

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  • おとなりの近代/西洋と朝鮮(姜在彦) - 見もの・読みもの日記

    ○姜在彦『西洋と朝鮮:異文化の出会いと格闘の歴史』(朝日選書) 朝日新聞社 2008.2 日の洋学と西洋思想の受容史というのは、なんとなく気になっているテーマである。また、先行例(結果的には失敗例?)として、中国の洋学受容史にも興味がある。しかし、書を目にするまで、朝鮮については、全く考えたことがなかった。いいが出たなあ、と感謝と期待をもって読み始めた。 第1部(17世紀)は、ほとんど中国の洋学史である。イエズス会宣教師のマテオ・リッチは、1601年に北京入りし、キリスト教の教理書・科学書・世界地図などを次々に刊行した。毎年、ソウルから北京に往来した朝鮮の使臣たち(燕行使)は、その漢訳西洋書を朝鮮に持ち帰った。1602年刊行の『坤輿萬国全図』は、1603年には朝鮮に伝わっていたという。おお~さすが陸続きは早いな。日には何年に伝わったんだろう? 鄭斗源(チョン・ドゥウォン)は山東省登

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  • 大胆不敵・近衛家熙/近衞家1000年の名宝(東京国立博物館) - 見もの・読みもの日記

    ○東京国立博物館 陽明文庫創立70周年記念特別展『宮廷のみやび―近衞家1000年の名宝』 http://www.tnm.go.jp/ 陽明文庫特別展? 文書(もんじょ)ばかりで地味なんじゃないかな、と思ったら、とんでもなかった。名宝・珍宝目白押しで楽しめたが、最も印象的だった「家熙の世界」のパートを中心に紹介しよう。近衛家熙(いえひろ)(1667~1736)は、江戸中期の近衛家当主。予楽院と号す。私はこの展覧会で初めて知った人物だが、書画・茶道・華道・香道など諸芸を極め、博学多識のマルチ文化人だった。とりわけ、能書家として名高い。 『予楽院臨書手鑑』は、家熙による名筆の臨書を貼り交ぜた折である。小野道風、行成、公任、空海など名家が並ぶ。へえーすぐに参照できるようにつくった複製便利帖かなあ、と思ったくらいで、あまり感心しなかった。ところが、折の続きに空海の『風信帖』の写しがあり、さらにそ

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  • 規範?能率?/国語審議会(安田敏朗) - 見もの・読みもの日記

    ○安田敏朗『国語審議会:迷走の60年』(講談社現代新書) 講談社 2007.11 イ・ヨンスクさんのから「国語」つながり。ただし、書は、敗戦から現在までの60余年を主に扱ったものである。 敗戦直後の文化的混乱というのは、いまの我々には、ちょっと信じがたいものがある。「漢字=封建制=非能率=軍国主義」に対置された「ローマ字=能率=民主主義」。昨日まで「八紘一宇」などと言い立ていたマスコミは、こぞって「ローマ字採用=民主化(アメリカ化)」に雪崩を打った。なんなんだ、この軽薄さは。 やがてGHQのアメリカ教育施設団が派遣され、教育改革に関するさまざまな提言を行う。その中には、日語のローマ字化も提案されていた。それから国語審議会では、現在派と歴史派の長い攻防が繰り広げられたが、つねに主導権を握っていたのは現在派(簡易化・表音化・漢字廃止論者)だった。何しろ、ローマ字論者の土岐善麿が会長をつと

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  • ひ弱な青年たち/大帝没後(長山靖生) - 見もの・読みもの日記

    ○長山靖生『大帝没後:大正という時代を考える』(新潮選書) 新潮社 2007.7 「大正青年と平成の若者は驚くほど似ている」というのが著者の着眼点である。大正は、圧倒的なカリスマ性で君臨した明治天皇と、彼に表象される「英雄」「闘争」「建設」の時代が過ぎたあとに訪れた「大衆」「消費」「軽さ」「童心」の時代だった。それは、昭和天皇没後の「平成日」と奇妙に重なる部分が多いという。 まあ確かに、日の近代150年の間で、最もいまに似ている時代を探せといわれたら、間違いなく誰もが大正時代を挙げると思う。偉大な父親の遺産をい潰す「若旦那」の時代である。 しかし、両者には相違点も多い。実は、大正青年の典型例として書に引用されている志賀直哉の自伝的小説があまりに面白かったので、書のあと、志賀の短編集を読んでみた。志賀は30歳になっても就職せず、文学に志すと称して昼過ぎまで寝ているような生活をしてい

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  • 西のみやこ、東のみやこ/国立歴史民俗博物館 - 見もの・読みもの日記

    ○国立歴史民俗博物館 企画展『西のみやこ 東のみやこ-描かれた中・近世都市-』 http://www.rekihaku.ac.jp/events/o070327.html これも連休と同時に終わってしまった展覧会だが、記録のために書いておく。我が国の中・近世都市がいかに描かれてきたのか、絵画資料を読み解く展示会である。取り上げる都市は、まず京都。ついで江戸。最後に三つの港町─長崎・堺・横浜である。 会場の入口を飾るのは、金地の扇面に描かれた『都の南蛮寺図』。天守閣みたいな三階建ての会堂の下に黒い僧衣のバテレンたちが佇んでいる。びっくりした。こんな絵画資料があるとは初めて知ったが、ちゃんと文化遺産オンラインに載っているのね。 歴博は、洛中洛外図屏風の収集館として名高い。しかし、最古の洛中洛外屏風(1520年代)といわれる「歴博甲」を見る機会に、私はなかなか恵まれない。今回も、前期(3月27

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  • 愛しの”文華”皇帝/乾隆帝(中野美代子) - 見もの・読みもの日記

    ○中野美代子『乾隆帝:その政治の図像学』(文春新書) 文藝春秋社 2007.4 あっ、中野美代子センセイの新刊! しかも乾隆(チェンロン)皇帝だ~!!と、書を見つけたときは、二重三重に心が躍った。中国人は乾隆帝が大好きだ。共産党の公式イデオロギーは、過去の皇帝を「人民の敵」とみなしてきたが、最近は、小説でもドラマでも「乾隆」の名を冠したものが大流行だという。私も、そうした娯楽作品の影響を受けて、乾隆帝のファンになってしまった。 しかし、このひと、なかなか一筋縄ではいかない皇帝である。狩猟遊牧民族である満州族のアイディンティティを保ちつつ、漢字・儒教文化圏の粋を体現し、チベット仏教を尊崇し、宣教師たちを使役して西洋式の庭園を構築する。それなりに侵略戦争は繰り返したけれど、苛烈な征服者のイメージはない。しかし、彼の残した「図像」の数々を読み解いていくと、独特の世界観に基づく帝王学、底知れぬ支

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  • 失敗者の魅力/幕末バトル・ロワイヤル(野口武彦) - 見もの・読みもの日記

    ○野口武彦『幕末バトル・ロワイヤル』(新潮選書) 新潮社 2007.3 雑誌『週刊新潮』に連載された「天保妖怪録」「嘉永外患録」を収録。前者は水野忠邦が運と才能を恃んで幕政の中心にのし上がり、過激な構造改革「天保の改革」に着手するが、庶民や幕臣仲間の恨みを買い、失脚。文字どおり、江戸の民衆に「石もて追われ」隠居謹慎の末、出羽国山形藩に転封となった。 小学生の頃、マンガで日史を学び始めた頃から、水野忠邦の印象はよくなかった。「享保の改革」の徳川吉宗、「寛政の改革」の松平定信は(戦国武将のように派手ではないけれど)それなりに颯爽としたヒーローのおもかげが感じられた。しかし、「天保の改革」は、なんだか歯切れの悪い失敗に終わる。これも戦国武将と違って、「人生五十年」と腹を切ったわけではないが、失脚後は歴史の表舞台に戻らなかったらしい。ふぅーん、「改革」というのは、つねに成功するものではないのだな

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  • 翻訳-自己を映す鏡/漢文脈の近代(斎藤希史) - 見もの・読みもの日記

    ○斎藤希史『漢文脈の近代:清末=明治の文学圏』 名古屋大学出版会 2005.2 いや~面白かった! 語りたいことが、たくさんある。何から行こう? 書は、今年の2月に出版されたものだが、私が書店で発見したのは先月のことだ。サントリー学芸賞の発表とともに、目立つ棚に移動したものと思われる。 サントリー学芸賞! 私は、どんな文学賞よりも、毎年、この賞の受賞作が気になる。とにかく、読んで間違いがない。私が読書に求めるものと、ピタリ照準が一致するのである。公式ホームページには、「従来、評論・研究活動を幅広く顕彰する賞は少なく、既存の枠組にとらわれない自由な評論・研究活動に光を当てることは、賞の重要な役割」とうたっている。よくぞ、そこに気づいてくれました!と喝采を送りたい。 ■サントリー学芸賞(サントリー文化財団) http://www.suntory.co.jp/sfnd/gakugei/ind

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  • 名筆の新たな世界・書のデザイン/出光美術館 - 見もの・読みもの日記

    ○出光美術館 書の名筆III 『書のデザイン』 http://www.idemitsu.co.jp/museum/index.html 2002年の『高野切と蘭亭序』、2005年の『平安の仮名、鎌倉の仮名』に続く、「書の名筆」シリーズだそうだ。私は、2002年当時はまだ書に興味がなくて、第1弾は見逃している。第2弾の『平安の仮名、鎌倉の仮名』は、私が、格的に書の魅力に目覚めるきっかけとなったものだ。 さて、第3弾。古美術の展覧会にはいろいろ行っているが、「書」には馴染みが浅いので、なんとなく敷居の高さを感じて緊張する。だが、今回は、そんな緊張を無にしてくれるような、楽しい展覧会だった。 最初のセクションは「書はデザイン?!」と題し、さまざまな字体のバリエーションを持つ、中国古代の石碑の拓を並べ、よく似た印刷活字体を取り合わせる。たとえば後漢時代の「礼器碑」は隷書体、褚遂良の「雁塔聖教序

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