世界保健機関(WHO)が今週公表した「国際疾病分類第11回改訂版」(ICD-11)では、ジェンダーに不一致であること(gender non-conforming)を「精神疾患」とする記述がついに削除されました。この大きな変化は、WHOの定めるグローバルな診断基準の改訂を求めてきた、世界各地のトランスジェンダーの活動家による粘り強いアドボカシーのたまものです。 トランスジェンダーの人びとが今も世界各地で戦うスティグマと差別の大半は、みずからのジェンダー・アイデンティティを表現しようとする強い欲求に対して、精神病理という診断を下してきた医療制度の歴史的なあり方に由来するものだと言えるでしょう。しかし実際には、スティグマや差別、いじめ、いやがらせは、ジェンダーに不一致であることに端を発するのではありません。むしろ、トランスジェンダーの人びとにメンタルヘルスの問題を引き起こす要因なのです。 しかし