第二回・2013/5/1 (毎月1日発行) 『花は咲く』異論 松本昌次(編集者・影書房) しばらく前、ある小さなリーフレットに、わたしは次のように書いたことがある。 ――この頃、NHKのテレビをつけて気になることがあります。それは38人の有名な俳優やタレントたちが、一輪の花を手にして歌いつぐ『花は咲く』(作詞・岩井俊二/作曲・菅野よう子)という、東日本大震災の「復興支援ソング」です。「今はただ なつかしい/あの人を思いだす」とか、「花は 花は 花は咲く/いつか恋する君のために」とか、なんとも甘い激励と癒しと浄化の言葉の羅列は、被害者たちを個人の「体験」にのみ、明るい希望にのみとどまらせようとしているとしか思えないからです。敢えて言えば、この歌は、戦争中の『海行かば』の裏返しの歌です。――と。 さて、春の選抜高校野球の入場行進曲にも、球児たちを颯爽と力づけるかのように選ばれた『花は咲く』が