バックグラウンド ー なぜ神経の解剖学なのか。なぜショウジョウバエなのか。 現代生物学は、遺伝子のクローニングや、突然変異やノックアウト生物を用いた研究が花盛りである。その中で我々は、細胞を同定したり、その細胞が線維を伸ばす過程を観察して詳しく記載するという、ちょっと学問の主流から離れた、地味な作業を行なっている。なぜこんなことをしているのだろうか。 精緻な記載的作業の大切さ マウスが4本足であることは、誰でも知っている。だからもし6本足のマウスを見つけたら、異常があるとすぐに分かる。いっぽうマウスの肋骨の本数は、誰でもすぐに答えられるものではないが、教科書をちょっと見れば書いてある。だからノックアウトマウスの肋骨が増えたり減ったりしていたら、研究者なら誰でもすぐに異常に気がつく。ちょっと注意深い研究者なら、何本目の肋骨に異常が起きたかも、ちゃんと分かるだろう。 ところが、脳の細胞はどうだ