この連載が本になりました。 <2020年3月12日発売> 『スゴ母列伝 いい母は天国に行ける ワルい母はどこへでも行ける』 詳細はこちら 今から10年以上前、慣れぬ育児で自己嫌悪の沼に落ちそうになっていた頃、心の支えにしていたエピソードがあった。 作家の岡本かの子が、息子の岡本太郎を柱に縛って仕事に励んでいたという育児伝説である。 現代であれば通報待ったなし。いや当時であっても、相当の激ヤバ母さんだろう。だが、そんな雑な育児ですら大芸術家が育つのだ。それなら縛り付けたことのない私の育児は全然大丈夫であるはず、と奇妙な安心感に包まれたものだ。 この岡本かの子・太郎エピソードは、のちに川上未映子さんの育児エッセイ『きみは赤ちゃん』でも見かけたし、田房永子さんの連載でも取り上げられていたのを拝見した。ロールモデルとして祭り上げられるようなキャラではないのに、一度耳に挟んだら最後、母親たちの心に棲