この項の(その1)、(その2)では、モーツァルトの「さいころ遊び」と言われている曲のうち、偽作 K.Anh.294d (K.Anh.C30.01) 、そして真作 K.516f をそれぞれ見てきた。これらは、偽作=さいころの目で作曲、真作=名前のアルファベットで作曲ということで、偶然性を取り入れている点では一見似ているように見えるが、作曲技法としては実はまったく違う内容を持っている。真作が名前のアルファベットと関係があることを世界で初めて発見した野口秀夫氏は、この曲の遊び方や評価について以下のように書いている。 「《音楽の遊び》K.516fは音楽としてどのように評価すべきなのだろうか。名前の長さは無制限であるから「組み合わせ」の計算が出来ず、可能な音楽は無限種類ある、と言っても良い程である。それならば、世界のモーツァルト・ファンが各々自分の名前を曲にして、モーツァルトと自分の合作の響きを評価