今年も憂鬱な季節がやってきた私は「冷やし中華」が嫌いである。フードジャーナリストという仕事を始めてからというもの、色々な場所で冷やし中華嫌いを公言してきたが、今では冷やし中華嫌いの第一人者くらいの言われようである。インターネットで「山路力也」と検索すると、検索候補に「冷やし中華」と出て来るほどである。私の冷やし中華嫌いは生半可なものではない、筋金入りなのだ。 「冷やし中華」は夏の風物詩として必ずといっていいほど名前が挙がる食べ物だが、街の中華屋さんなどで「冷やし中華はじめました」の文字をみるたびに憂鬱になる。冷やし中華はじめなくて良い、と思う。あるいは始めても良いけれど、私の知らないところでひっそりと始めてくれ、と思う。そして私の知らないところで早く終わってくれと願う。何ならそのまま永遠に終わってしまってくれて良いとも思う。 「なぜ冷やし中華が嫌いなのか」と人は問う。まず、その質問の設定自