車と車の流れの間を、 脚を十本ぐらいにして猫が駆け抜ける。 道の向こうには 待っている家族が居るかもしれない。 小さなお気に入りの場所が或るのかもしれない。 カナラズも、エイエンも、分からないまま、 君は駆け抜けた。 アスファルトとタイヤに囲まれた場所で 君は生まれて、小さな世界を知って、 小さな時間を生きる。 刹那と刹那の流れの間を、 小さな永遠を抱えて猫が駆け抜ける。 僕は君達が刹那を避けきれずに アスファルトに永遠を零してしまうのを何度も見た。 この世界が君達に強いている事を、 僕は取り除く事もできず、 明日も明後日も、 君達が無事に道の向こう側に辿り着く事を、 祈るばかりだ。 車と車の流れの間を、 地上20センチの視線で捉えて猫が駆け抜ける。 鉄とコンクリートの中では、 小さな命はもっと小さく見えて、 けれどその分、温度や光は凝縮されて、 そんなふうに生きるべきなのは、 みんな同じ