独特のユーモアと、端正な画面構成が多くのファンを惹きつけるフィンランドの映画監督、アキ・カウリスマキ。2017年に映画監督として引退を宣言した彼が、最新作『枯れ葉』で復活を遂げた。 その最新作を前に、「カウリスマキがどんな監督なのか」「なぜ多くのファンから支持されているのか」と気になっている読者も多いだろう。そこで本記事では、監督の大ファンでもあるライター・木津毅に、カウリスマキの過去作を振り返りながら、その作家性・魅力を掘り下げてもらった。 「社会の片隅で生きる人々をまなざす作家」の引退宣言と復帰 労働者の庶民こそが映画の主人公である――アキ・カウリスマキはその姿勢を貫き続けてきた映画作家だ。そこには大きく言って2つの意味がある。1つは、社会の片隅で生きる者たちにこそ光を当てるということ。もう1つは、そんな名もなき者たちのささやかな人生にも、映画で描かれるべき瞬間が宿っているということだ