人類を脅かす異形のものに、異形の力を備えながらなおも人間性を失っていない存在(いわばハイブリッド)が立ちむかう。こんにちではホラー小説のサブジャンルをなすほどの定型になっているが、この設定を最初に用いた作品はなんだろう? 定型になるのはそれだけ魅力があるからだ。ひとことでいえば「聖/邪」もしくは「貴/穢」の葛藤である。『パンドラの少女』の主人公メラニーも、この両義性を一身に担っている。 罹患した人間を〈飢えた奴ら(ハングリーズ)〉に変えてしまう奇病はまたたくまに世界中に蔓延し、人類の文明と秩序は二十年ほどですっかり崩壊してしまった。〈飢えた奴ら〉は知性のない生ける屍であり、人間を襲っては食い殺す。しかし、奇病にかかりながらも知性を失わずにいる子供たちが発見される。彼らは研究材料として、ロンドンの北三十マイルにある陸軍基地のなかの〈ブロック〉に集められた。それぞれ独房に閉じこめられ、授業のと