欧米先進国に比べ、数学で博士号を取得する人間が少ない。長期的に見て日本の数学研究力は低下している、と海外のトップクラスの数学研究者からも心配されている−。科学技術政策研究所(現 科学技術・学術政策研究所)の報告書「忘れられた科学−数学」が、科学技術・学術関係者に少なからぬ反響を呼んで10年になる。報告書の本来の狙いは、産業界でも数学研究者が活躍している米国の例などを挙げ、数学への公的支援や数学と産業、数学と他分野との共同研究を促すことにあったのだが、その後、数学を取り巻く状況に変化はあったのだろうか。 15日に科学技術・学術政策研究所が公表した講演録「数学は世界を変えられるか?〜『忘れられた科学−数学』から10年 数学イノベーションの現状と未来」に、他分野との共同研究で成果を挙げている数学者たちの興味深い言葉や指摘がある。 「数学は『数を扱っていない』ことが多い」。「『具体化する』(物事を