財政破たんした北海道夕張市の一角。無人となった集合住宅が、出入り口を野草に覆われたまま静かにたたずんでいる。街の衰退を象徴するかのようだが、この風景に、地域の今後の方策が示されている。これは、市が政策的に空き家にした建物だからだ。 こうした意図的な空き家が並ぶのは、市南部にある「真谷地(まやち)」地区だ。明治時代後半から大正、昭和を通して多くの炭鉱労働者、その家族でにぎわった街も、1987年に閉山を迎えてからは人口が減少。幹線道路から離れ、近年は商業施設もないことから市内でも特に人口流出が激しい地区の一つとなっている。数千人いたともいわれる住民は、現在は150人強。平均年齢は70歳を超える。現在この多くが暮らすのは、かつて炭鉱会社が社員用に建てたアパート型の集合住宅だ。閉山後は市営住宅に転換され、建物の維持管理コストは市が負担している。 人口減少にともなって、市営住宅の入居率も下がっていく