1.翼理論の芽生え 大空へ飛翔することは人類の最大の夢でした。その実現には翼の持つ性質の理解が必須です。ここでは流体中を移動する翼が生み出す揚力のメカニズムを説明します。 翼幅(スパン)が有限な翼(三次元翼と言う)の議論はかなり難しくなるため、ここでは翼幅が無限に長く翼のまわりの流れが二次元的に解析できる二次元翼に限って議論します。三次元翼については別稿で説明します。 揚力とは何かを理解するためには、翼の持つ特性が次第に明らかにされてきた歴史的な流れを把握しておくことが必要です。導入として最初に別稿「翼理論の芽生え(リリエンタール、ラングレー、ライト兄弟の飛行)」を御覧下さい。 2.循環理論の芽生え 二次元翼翼理論では循環という概念が中心的な役割を果たしますので、まずその説明から始めます。翼理論への最初の貢献はおそらく1852年にマグナスが観察した事実です。 (1)ハインリッヒ・マグナス(