俺が彼女と会うのは初めてだった。 彼女は俺の顔を見ると、「はじめまして、ってのもおかしいね」と言って笑った。 後ろには彼女が先ほど降りてきた車……というかトラクターがあった。 窓からみえた運転手は、顔がじゃっかん土で汚れていて、麦わら帽子を被った農家のおっさんだった。 彼の存在と彼女の存在が結びつかなすぎて、俺は混乱した。 彼女が「じゃ、映画でも見ようか」と言っているところ、農家のおっさんは俺に何やら微笑んで、手を振ってそのままどこかに走り去った。 彼女は結局その日、なぜその農家のおっさんの車から降りてきたのかを一切言わなかった。 彼女とはいわゆるSNSで知り合って、何気なく(といっても、俺に下心がなかったとは言えないけど)会話や通話をしていた。 当時、俺は19歳で彼女は17歳だった。 会話の内容はその年頃にありがちなくだらないもので溢れていて、バイトの愚痴だとか学校の悪口だとか、そんなも