旅行作家の下川さんと久しぶりに築地で飲んだ。 下川さんは、今やバックパッカーたちの教祖的存在といわれ、「12万円で世界を歩く」(朝日新聞社)でデビュー以来、アジアと旅に関して多数の著書がある。 「12万円で世界を歩く」というのは、1980年後半、当時の週刊朝日がグラビア特集で組んでいた連載企画で、旅費、生活費として12万円だけ渡され、実際にその予算で世界を旅して、その一部始終を紀行文にまとめたものだ。「もともと僕のほうから持ち込んだ企画だから、文句はいえないんだけれど、編集部は取材費として本当に12万円しかくれないんだよね」と下川さんが笑いながらぼやいていたことを思い出す。 下川さんの本を久しぶりに本棚から取り出して読み返してみた。この手のルポルタージュは、10年も経つと、内容がセピア色になってしまって、とても 読めたものではないのだが、驚いたことに16年前に出版された、本の内容には古びた