昔々、布施東劇という映画館がありまして、もう二十年ぐらい前に閉館しました。最後の三年ほど、まあラインナップ的にもほんとうに暇だったせいか、もう人手など割かずにぎりぎりで回しておけばいいや、という時期がありまして、要はモギリに一人、映写と電話番に一人置いておけばそれでいいや、ということになっていた。 ……で、そこで朝から夕方、あるいは昼から夜までずーっと入ってたのが……オレだああああ! まだ社員になる前だったけど、さぼらないし悪いことしないし、とりあえず一人でやらしといても安心だ、ということで便利に放置されていた。若くして「東劇の主(ぬし)」と呼ばれ、時々映写機を回しに行きながら、あとはずーっとミステリとかホラー小説とか読んでいたな。 その後、そこが潰れて別の劇場に移って、まあそれ以降はまずまず忙しくなったわけだが、あの東劇でずーっと本読んでた時期は二十二年の映画館で働いてた時期の、半分ぐら