海がほえた。 南米大陸の南端、マゼラン海峡。強風と高波が船に襲い掛かった。 松島町のマリンピア松島水族館を運営する仙台急行社長の西條直彦さん(68)は、チャーターした船の操舵(そうだ)室で、パイプにしがみついていた。 波をもろに受け、船はまるで潜水艦だった。「板子一枚下は地獄」という言葉が脳裏をよぎる。 大波が迫る。ビル4階の高さに見えた。「もう終わりだ」。死を覚悟した。 松島水族館は1986年11月、チリ政府の許可を得てマゼラン海峡でイロワケイルカの捕獲作戦に着手した。体長約1.5メートルで白と黒の模様が特徴。パンダ人気にあやかって「海のパンダ」と呼び、日本初の展示を目指した。 81年に岩手県沖で、展示の目玉にしようとリクゼンイルカの捕獲に乗り出し、失敗している。イロワケイルカはのどから手が出るほど欲しい動物だった。 「マゼラン海峡の暗い海で初めて見たとき、白と黒のコントラ