ルイ=フェルディナン・セリーヌが戻ってきた。この戦争の時代に、『戦争』と題された作品とともに帰ってきた。舞台は第一次世界大戦、語り手の名はフェルディナン。物語の幕開けはこうだ──「翌(あく)る日の夜中もまだしばらくそこから動けなかった。左耳がまるごと、それから口も地面に血糊(のり)でへばりついている。耳と口の間では轟音(ごうおん)が唸(うな)りを立ててる」。戦地に横たわるフェルディナンの上には激しい雨が降り注ぎ、隣には仲間の死体が転がっている。フェルディナンの片腕は酷く負傷し、動かすことができない。銃弾の嵐と爆撃の轟音に包まれるようにしてフェルディナンは眠る。このように戦時下の極限的状況が語られる物語の第一パラグラフは、次のように締められる──「おれはこの頭の中に戦争を捕まえたんだ。そいつはいまだってこの頭の中に閉じ込めてある」。 フェルディナンはなんとか起き上がり、負傷した腕を押さえつつ