◎揺れ直後、陸の津波/牙むく用水、田畑のむ 須賀川市長沼の藤沼ダムは、3月11日に決壊した。泥流が流域の家屋や田畑を襲い、7人が死亡、1人が行方不明になっている。土を盛り、コンクリートブロックで一部補強したかんがい用のダムは、過去最大級の地震エネルギーであっけなく崩れ落ちた。 「陸の津波」が、人と家をのみ込んだ。 藤沼ダム下流約500メートルの滝地区。農業鈴木君代さん(75)は地震発生時、テレビにしがみついた。揺れが収まりかけたら、「ゴオー」と大きな音が鳴り響いた。 「何かな、と玄関の方を振り向くと、あっという間に黒い泥水が入ってきた」。田畑を潤す農業用水が、鉄砲水となって襲ってきた。 鈴木さんは腰の近くまで泥水に漬かり、居間の畳は浮き上がった。隣家や農業機械、スギの大木などが、濁流とともに鈴木さん方に次々と押し寄せた。 「怖くて怖くて、何が起きたのか分からなかった」。居間のガ