先月このコラムで数行だけ「田母神論文は検証に耐えない論拠でつづられている」と書いたら、何人かの読者からおしかりを受けた。「おまえは日本人か!」と。田母神論文の誤りについては、朝日新聞で先月13日に北岡伸一東大教授、同じ新聞で今月22日にジョン・ダワー米MIT教授が「『国を常に支持』が愛国か」と優れた論駁(ろんぱく)をしているので、ここには記さない。ただ、「田母神氏に反対する人間は愛国者ではない」という決めつけ方がおかしいことだけは申しあげておこう。 軍部が指導した昭和から終戦までを、司馬遼太郎氏は日本がさまよいこんだ「魔法の森」と呼んだが、その時代の軍国主義を別にすれば、近代に至る日本の文化と国民性には素晴らしいものがあった。世界に誇れる歴史である。 今月初め、私はある中学校を訪問し、2年生のクラスで質問した。「君たち、松尾芭蕉のことを知ってますか?」。生徒たちが、当たり前だという顔で答え