(1) 原子価と構造式 分子の中で、ある元素の原子が形成しうる共有結合の数を、その元素の「原子価(valence)」といいます。例えば、水素Hの原子価は1価なので、水素Hと化合する元素の原子価は、その原子と結合している水素原子の数と同じになります。例えば、炭素Cは水素Hと化合してCH4という分子を作るので、炭素Cの原子価は4価になります。通常、原子価は「その原子の原子価殻を満たすのに必要な電子の数」に等しいです。次の表.1に、代表的な元素の原子価を示します。 表.1 代表的な元素の原子価 原子価は、価電子の数とは異なることに注意してください。価電子は、化学結合や物性に深く関わる電子のことです。典型元素では、価電子は最外殻電子の数と等しいです(貴ガスは除く)。したがって、価電子の定義からは、まるで価電子の数だけ共有結合を作りそうなのですが、現実にはそのようなことはなく、価電子の中の不対電子