7世紀の初めに拓跋国家の掉尾を飾る大唐世界帝国が成立して、最初の30年を太宗(李世民)が牽引、その後の半世紀を英邁な武則天が引き継いだ。武則天の時代に白村江の戦いが行われ高句麗が滅んで朝鮮半島が新羅によって統一され、わが国には激震が走った。そして、持統、元明、元正、孝謙称徳と女帝の世紀が出現した。おそらく武則天の活躍が彼女たちのロールモデルとなったであろうことは想像に難くない。本書は天武・持統に繋がる最後の女帝、孝謙称徳の生きざまを描いた小説である。 冒頭、女帝最期の夢が語られ、崩御が腹心の吉備命婦(由利)によって告げられる。群臣はどよめく。後継者をどうするのか。流人、和気広虫と清麻呂が召還されて戻ってくる。本書は、いずれも女帝に信頼された広虫と由利という2人の女官の目を通して女性の地位向上に尽くした女帝の真の姿を詳らかにしていく。回想の間にも藤原4家を中心に陰謀が入り乱れて政治は動いてい