どんな議論にも作法が必要だ。基本原則は事実を正しく伝達することと、筋の通った説明をすることである。この数カ月間に展開された護憲派の言説は、原則に外れていると思われてならない。 ≪自民96条改正案を完全誤解≫ いくつも例証できるが、まず5月3日付の朝日新聞に掲載された石川健治東京大学法学部教授の論稿。「96条改正という『革命』」「立憲国家への反逆に動く議会政治家たち 真に戦慄(せんりつ)すべき事態」という大仰(おおぎょう)で扇情的な見出しの下で、「96条を改正して、国会のハードルを通常の立法と同様の単純多数決に下げてしまおう、という議論が、時の内閣総理大臣によって公言され、(中略)これは真に戦慄すべき事態だといわなくてはならない」と記述されている。 自民党の憲法96条改正案を完全に取り違えている。同党の改正案は、現行の「各議院の総議員の3分の2以上」を「両議院のそれぞれの総議員の過半数」に改