ニャルラトホテプ……這い寄る混沌……残ったのはもうわたしだけ……この何もない空を聞き手にして、お話ししようと思います。 そもそものことは、はっきりとは思い出せません。でも何ヶ月か前です。みんなひどくぴりぴりしていました。世の中がひっくり返ろうとしているところへきて、なぜだか強く身に危険を感じて不安になる――あたりが、どこもかもが危なかったのです。夜をただわけもなく怖がる、そんな極端なときにしか感じないたぐいの〈危険〉です。思い出せば、道を歩くみなさん真っ青な浮かない顔で、何かの前触れだとか、これから先のこととかささやくのですが、どなたもわざわざ繰り返したり、聞いたことにうなずいたりはなさいませんでした。国中はこれからとんでもない罰を受けるかのようで。星空の奥の深い闇から吹き流れる冷ややかな風に、人は暗くうら寂しいところで震えていました。四つの季節がめぐるなか、悪魔のような異変が起こる――時