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ブックマーク / satoshi.blogs.com (39)

  • アップルの30年ロードマップ

    昨日、日経BP主催のAndroidに関するセミナーで講演+パネルディスカッションをしたのだが、パネルディスカッションを一緒にさせていただいた、日通信の福田尚久氏との話(特に、楽屋に戻ってからの非公開の話)が興味深かった。 福田氏は、スティーブ・ジョブズがAppleに戻り、Microsoftからの資金調達、iPodのリリース、アップル直営店の展開、という今のAppleの成功の基盤となる「奇跡の復活」を遂げた時期にジョブズの側近として活躍した人。 彼に言わせると、今のAppleのビジネス戦略は、倒産寸前だった97年当時に作った「30年ロードマップ」に書かれた通りのシナリオを描いているという。 もちろん、具体的な内容は企業秘密でもあるので直接聞き出すことはできなかったが、ここ12年の間にアップルが出して来たもの(iPod, iTunes, iPhone, Apple TV, Safari, O

  • モバイルブラウザーのデファクトスタンダードになりつつあるWebkit

    最近、なぜかいろいろなところでHTML5やら モバイル端末向けのブラウザーの話をすることが多いのだが、今年になってトレンドとしてはっきりと見えてきたのは、WebKitがモバイル端末のブラウザーのデファクト・スタンダードになりつつあるということ。 私自身、最初にAppleがブラウザーを作ると聞いた時には「なんでそんな大変なことを今更?片手間でできる仕事じゃないぞ」と思ったりしたわけだが、その予想に反してAppleが見せた気度とリーダーシップには当に関心してしまった。 世の中にすでに何百万とあるサイトとコンパチビリティを保つというだけでも大変な作業なのに(経験者語る)、CANVASやCSS Transform/Transitionなどの新しいコンセプトを次々に導入してHTML5の標準化でリーダーシップを取っている点は注目に値する。 「スタンダードを決める」立場に自分を置く事がどのくらい重要

    モバイルブラウザーのデファクトスタンダードになりつつあるWebkit
  • GoogleのAndroid向けのアプリビジネスはなぜ魅力的ではないか?

    PhotoShareをiPhone向けに提供して早くも一年になるが、もっとも良く投げかけられる質問は「PhotoShareはAndroidとかの他のプラットフォームに移植しないの?」というものだ。 少し前までは、「まだiPhone以外のビジネスが十分に大きくないから今はまだ早い」、「iPhone上でやるべきことはまだ沢山あるから」、などと答えて来たのだが、最近は少し見方が変わってきた。 今の勢いでHTML5が進化・浸透してくれるのであれば、わざわざ移植コストをかけてAndroidWindows Mobile向けにネーティブ・アプリを開発するよりは、少なくともUIの部分をすべてHTML+Javascriptにまかせたアーキテクチャでのインタラクティブなアプリの開発というのも十分に可能性があるように思えてきたのだ。 この「HTML+Javascriptですべて出来るじゃん」という発想は、そも

  • AppleをAppleにしているもの

    ワシントン大学で受講しているMBAの授業もあと3ヶ月を残すばかり。来週から始まるクラスの一つが「General Management & Strategy」というクラス。Microsoftの戦略コンサルタントを勤めるCharles Hillというやり手の教授の授業は、スピード感とテンションの高さで大好きなクラスの一つだ。 最初の授業が「Apple 2008」と題したケーススタディ。Apple歴史を勉強した上で、Appleの長所・弱点、そしてそれを取り巻く環境を解析する(SWOT analysis)というクラスだ。が「あなたが教えるべき」というぐらい楽しいテーマなので、水を得たさかなの様にレポートを一気にまとめて準備完了。せっかくなので、キーポイントをここに書いてみる。

  • 「戦略的OS」の開発がことごとく失敗している点に関する一考察

    90年代にIBM、MicrosoftApple各社が巨額の開発費を投じて作っていた「戦略的OS」がすべて失敗してしまったことを皆さんはご存知だろうか? IBMが作っていたのはOS/2。元々はMicrosoftとの共同開発だったが、途中で仲違いをしてしまい、最後はIBMだけが細々とサポートしていたことすら覚えていない人が多いとは思うが、Windows95の成功であっというまに市場から消えてしまったのがOS/2。具体的な数値は公開されていないので分からないが、両社が数百人体制で数年間開発していたので、少なく見積もっても日円で数百億円は投じられたことは間違いない。 Cairoの方は私自身が初期のころにいたこともあるし、最終的には「Chicago(Windows95のプロジェクト名) vs. Cairo」の戦いの最前線にいた私としては知りすぎている点も多いのだが、一つだけ確かなのは、プロジェク

  • マーケティングともの作りの話

    「マーケティング」という言葉を聞くと「商品に関する情報を顧客に向けて発信する」だけと考える人が多いが、マーケティング部門の役割として同時に重要なのは、顧客のニーズをきちんと探り出して「何を作るべきか」という部分に反映させること。 ちょうど今読んでいるHarard Buisness Reviewにとても良い例が出ていたのでその紹介。 米国のペンキ会社が、競争相手に安売り競争を仕掛けてられ、「利益を削ってでもマーケットシェアを維持すべきか」という厳しい選択に迫られていた。その時にその会社のマーケティング部門が調べ出したのが、主な顧客である塗装業者が何にお金を使っているかというデータ。 そのデータによると、ペンキそのものは経費の15%にすぎず、大半は人件費だという。それも、ほとんどのケースで、一度塗ったペンキを十分に乾かすために、次の日にもう一度現場に足を運んで二度塗りをしているためによけいな人

  • Life is beautiful: Google Chromeに関してひとこと

    今回Googleが発表したウェブ・ブラウザー、Google Chromeは、ひと言で言えば、「安定度・安全度を高めるために、それぞれのタブを別プロセスで走らせるタブ・ブラウザー」である。 95年にIE3.0を設計した時には、タブのコンセプトも存在せず、セキュリティの問題もそれほど強く意識していなかったので、ウィンドウごとに1スレッドを割り当てたマルチ・スレッドを選択した訳だが、ここまでウェブ・アプリケーションが重要になってくると、マルチ・プロセスに移行するのは当然。特定のページ上でのJavaScriptの挙動がおかしくなったからと言って、ブラウザーすべてが落ちてしまう今までの設計が異常。 一つのウィンドウ下で管理させるそれぞれのタブにプロセスを割り当てる、一般的に一つのウィンドウに一つのプロセスやスレッドを割り当てる通常のGUIアプリケーションとは異なるが、ユーザー・モデルとリソース管理は

  • マイクロソフトがついにオンライン版の Windows と Office を作ると発表

    社員の一人が、「マイクロソフトが遂にオンライン版のWindows と Office を発表」というセンセーショナルなタイトルの記事へのリンクを送ってくれた(参照)。 「発表って、もう出来ているのか!オンライン版のWinodwsってなんだ?」と記事を読んでみると、厳密には「そういうものを作ることにしました」というイニチアチブの発表に過ぎない。少しはデモがあるらしいが。うーむ。 さらに読み進めると、Windows Live はメッセンジャー、オンライン・メール・サービス(hotmailとは別のものを作るようだ)、ストレージ・サービスなどを組み合わせたサービスだそうだ。どこが新しいんだろう?YahooGoogle との戦いに気になったと宣言したいのだろうが、これを Windows Live と呼ぶのはかなり強引だ。MSN ブランドではもう戦えないととうとう観念したのだろうか。 Office

  • Life is beautiful: リーダーシップについて思い出したこと

    アメリカの人口の12%が「貧困層」であり、そう言った人たちは日々の事も満足にべることの出来ない生活をしている、などの報道は、米国に住んでいると新聞やニュースでは良く見かける。しかし、中流以上の生活をしている我々にとってみれば、生活圏がほとんど重ならない彼らの生活の実態は、なかなか実感として捉えられず、単なる「統計データ」としてしか頭に入って来ない、というのが正直な所である。 しかし、今回のハリケーンで、彼らの生活の基盤がいかにもろいものか、そして、その数がものすごいものであることを、映像を通して目の当たりに見させられることになったことにショックを受けている人はとても多いはずだ。 今回のハリケーンの被害は、政府からの非難命令にも関わらず、逃げるための交通手段も持たず、逃げたところで避難先のホテル代も払うことが出来ない人達が「予想に反して」10万人も市内に残ってしまったために大きくなってし

  • 愛すべき理科系人間たち

    理工学部の大学時代の友人に、常にメモ帳を持ち歩き、ジョークを聞くたびに書き取っている男がいた。なぜそんなことをしているか尋ねると、「合コンの時のネタに使えるから」だと言う。彼は、ちゃんと結婚できたのだろうか… これは極端な例だが、アメリカで楽しく生きていくには、ジョークの一つや二つを覚えておくことは大切だ。ゴルフ場で初対面の人とゴルフをすることなどは良くあるので、話題に困ったときや、相手がミスショットを重ねて気まずくなった場面で、覚えておいたゴルフ・ジョークを披露してその場の雰囲気を和らげる、というのはアメリカ人の良く使うテクニックだ。どのゴルフ・ジョークも、異常とも言えるほどのゴルフ好きをジョークにしたもので、それを自分になぞらえて笑うのだ。 そういったゴルファー・ジョークと同じように、理科系人間を素材にしたジョークを集めようと探しているのだが、なかなか集まらない。ビル・ゲーツをネタにし

  • Pervasive Application

    The continuous innovation of hardware technology in last two decade made it possible for all of us to have 4 GHz CPU, 1 GB RAM and 100GB HD in our desktop PCs, notebooks, and even game consoles. It sounds great, but I think it is time for all of us in this industry to think if this is the right direction to continue throughout the next decade. Let's take a look at the list of technologies below an

  • 「Software is service」の心構え

    社員向けの英語ブログの3番目のエントリーは、「Software is service: Why is it so hard for software engineers to fully internalize it?」というタイトル。私の会社には、MicrosoftApple、PalmなどでOSとかIDEなどの開発経験のある優秀なエンジニアが集まっているのだが、伝統的なソフトウェア作りでの成功経験があるからこそなかなか理解してもらえないのが、「Software is Service」の心構えだ。今回のエントリーは、そんな彼らのためのメッセージ。 少し前までのソフトウェア作りのプロセスは、(1)マーケットやテクノロジーのことが分かっている賢い人たちを集め、(2)彼らに作るべきプロダクトをデザインさせ、(3)必要な人員を集めて作り込み、(4)ある程度できたところでベータ版としてリリースし、

  • Life is beautiful: パーベイシブ・アプリケーションという世界観

    先日、社員向けの英語ブログでPervasive Applicationというタイトルのエントリーを書いたのだが、今日はそれについての解説(翻訳したものをここに載せようと試みたのだが、どうしても翻訳調になってしまうのが耐えられないので、解説という形を採ることによりいつもの文体で書くことにした)。 パーベイシブとは「浸透する」という意味の形容詞で、IT業界には「偏在する」という意味のユビキタスとほぼ同じ意味合いで使っている人が多い。ユビキタス・アプリケーションと呼んでも良いのかもしれないが、私としては「ユビキタスになってきたデバイスとネットワークを通じて、どんなデバイスを使っていようと、いかなるネットワークに繋がっていようと、ユーザーにコンテンツやサービスを届ける」という意味合いで、ネットワークを通じてユーザーに染み込んでいくようなイメージが出るパーベイシブの方がしっくり来る。 アプリケーショ

  • ユーザー参加型コンテンツビジネスのまとめ

    最近CGM(Consumer Generated Media)関連の質問をされることが多いので、一度頭の中にあるものを整理する意味でも、箇条書きにしておく。 従来のWeb1.0的なコンテンツビジネスと比べた時の利点 ・常に新鮮なコンテンツをコストをかけずに提供できる点 ・バイラルマーケティング効果(コンテンツを作ったユーザーが他の人に宣伝してくれる) ・根的にコミュニケーションツールであること(人がオンラインになるのは、他の人と繋がるため) ・ユーザーの数が増えれば増えるほどサービスの価値が上がる点 ・長く使えば使うほど、そのユーザー自身の財産が形成され、サービスから離れにくくなる点 意識しておくべき点 ・自社コンテンツを持っていない企業が新規参入できる点 ・ユーザーは予想もしない使い方をすることがあること ・コミュニティの作られ方しだいでサービスの質が大きく左右されること ・積極的に参

  • プラットフォームを選ぶということ

    この業界で仕事をしていると、しばしば迫られるのが「どのプラットフォームに向けて商品開発をして行くのか」という決断。会社としての経営判断の場合もあれば、個人のスキルアップやキャリアパスのための判断の場合もあるが、いずれにしろ限られたリソース・時間をいかに有効に使うか、という点ではとても大切。 パソコン用のソフトウェアであれば、「Windows向けに作るのかMac向けに作るのか」というOSレベルでの選択肢もあるし、「Windows Vista独自の機能を使って差別化を図るのか、それともWindows XPでもちゃんと動くように作ってまずは大きな市場をとりに行くのか」というOSのバージョンレベルでの選択肢もある。もちろん「そもそも特定のOS向けのアプリを作るべきか、それとも、すべてウェブ・アプリケーションとして作るか」というアーキテクチャ・レベルでの選択肢もある。 「少なくともここ数ヶ月はiPh

  • 「作っては壊す」過程があってこそ良いものが作れる

    iPhone用の「はてな人気エントリーリーダー」、そろそろ形になってきたのだが、作ってみていろいろと発見した部分もあったので、全面的にクラス構成を見直し、大幅に書き直した。 HTTPで通信をしているコードが二カ所に分かれていたので、それをDataOverHTTP/XMLOverHTTPという二つのクラスにまとめ(XMLOverHTTPはDataOverHTTPのサブクラス)、はてな独自のRSSフィードを読んでいるコードから一般的なRSSフィードを扱うコードをくくりだしてRSSFeed/RSSFeedLoaderという二つのクラスにまとめて、あとで別のアプリケーションで再利用することを可能にした。それに加えて、各種ローダーに非同期通信をさせる主体をController(HotEntryViewController)からModel側(HateneHotEntry)に移すことにより、難解になりが

  • Life is beautiful: なぜアップルにできたことがソニーにはできなかったのか

    アップルがiPod+iTunes+iTunes Storeというハード・ソフト・サービスを巧みに組み合わせてネット時代にふさわしいコンシューマ・エレクトロニクス・ビジネスモデルを見せてくれたことに関しては、ここでもさんざん書いて来たが、反面教師として注目すべきなのは、ソニーになぜそれができなかったのか?ということ。 自分自身がメディア産業を持ち、ウォークマンというブランドを持ち、ネットビジネスに抜群のセンスを持つ出井氏を社長に据えたソニーはアップルよりははるかに良い立場にいたはずだが、なぜこんなことになってしまったのだろうか。 メディア産業を持つことが逆に足かせになった、ソフトウェア開発力の差、たまたまラッキーだっただけ、天才スティーブジョブズがいたから、イノベーションのジレンマ、などのそれぞれの側面から考察を加えることは可能だが、あの時代のソニーに特有の問題として特に注目すべきなのは、あ

  • gPhone雑感:「モバイル・プラットフォーム戦国時代」の幕開けだ

    今朝になって、話題のgPhoneがアナウンスされた(参照1)訳だが、大方の予想を裏切ってそれはデバイスではなくてソフトウェア、それも2005年にGoogleが買収したandroidという会社の作っていたLinuxベースのマイクロ・カーネルと、バーチャル・マシン。androidの買収とともにGoogleに入ったAndy Rubinがandroidの前に作ったSidekick (Danger Inc.)の中身を良く知る私としては、「これってDanger OSとどこがちがうんねん?」という感じ。 ほぼ同じ時期に会社をスタートしたこともあり、Dangerの連中とはスタートアップ当時から一緒に仕事をし、サードパーティとしてSidekick向けのソフトウェアを作った数少ない会社の一つがうちの会社UIEvolution Inc.だ(資料2)。 Javaに似てはいるが微妙に異なるバーチャル・マシンを持ち、

  • 「CGMサービス」と「0と1で割り切れるデジタルの世界」との妙なミスマッチ

    ずいぶんとスパムに攻撃されてしまっていたブログパーツ「ラーメン大好き」。ブログパーツを貼付けていただいた方々にはご迷惑をおかけしてしまったが、ようやくデータベースのお掃除をし、簡易スパムフィルターを設置させていただいた。 今回の場合は、私自身が注意を払っていない間にスパムに攻撃されてしまい、それをユーザーの方にコメント欄で指摘していただいてから対処する、ということになった。小さなサービスだし、ユーザーもそれほど多くないので大問題にはならなかったが、それでもご迷惑をおかけしたことには違いなく、反省している。 ここ2〜3年の間に「Web2.0だ、CGMの時代だ!」と星の数ほどのベンチャー企業が作られたわけだが、そこでちゃんとビジネスを成立させたり、Googleによる買収などのExitに成功させた企業はごくわずか。どうやったらそんな企業の一つになれるのかが分かれば苦労はしないのだが、その鍵を握る

  • 交渉の場にのぞむ前にしておくべき心の準備

    ネゴシエーション(交渉)に関するテクニックにはさまざまなものがあるが、その多くが「いかに自分の欲する条件に近いものを勝ち取るか」をゴールとしたもの。それはそれで役に立つのかも知れないが、私としてはどちらかというと、今読んでいる「Getting to YES(日語訳:ハーバード流交渉術)」というに書いてあるアプローチの方がしっくりと来る。 このの筆者(Roger FisherとWilliam Ury)は、一般に良く使われる「交渉は勝つか負けるか」「相手に手の内を見せない」「自分はできるだけ譲らずに相手に譲らせる」などのテクニックは交渉を長引かせるだけだし、その過程で相手との信頼関係を損ねかねないと警告する。 このにはいくつかの有効な提言が含まれているので何回かに分けて紹介したいと思うが、まず最初に紹介したいのは、交渉の場にのぞむ前に自分がしておくべき心の準備の話。 多くの場合、人は交