「実は耳が聞こえていた」ばりに根深い、表現の問題村上春樹が「文藝春秋」誌に発表した短編小説に北海道中頓別町の町議が抗議した問題、本人が「心苦しいことであり、残念なことです」とし、単行本化の際には作中に登場する町名を変えるとのコメントを発表したというニュースを読み、うなだれた。「実は耳が聞こえていた」という例の一件のインパクトもあり、どうしても扱いが小さくなったが、表現の方法論を考える上でこちらはこちらで根深い問題を含んでいる。 経緯を振り返っておく。問題とされたのは、短編小説「ドライブ・マイ・カー」の一場面、俳優の主人公を乗せた中頓別町出身の女性運転手がタバコを車の外へポイ捨てするのを見て、主人公が「たぶん中頓別町ではみんなが普通にやっていることなのだろう」と感じたシーン。中頓別町議ら6名が、そんなことは「普通に」やることではない、と刊行元の文藝春秋に質問状を送付したという。 なんと、その