塩川伸明『民族とネイション』を読了。広範囲に目配りの利いた良書だとは思いますが、全体的に広く浅くという印象で、ほとんど刺激は受けませんでした。著者が専門とする地域での掘り下げがさしてあるわけでもないので、一番有用なのは巻末のブックガイドかなという気がします。要するに教科書的なのですが、導入書としては敷居が微妙だし、民族問題やナショナリズムについて最初に読むべき数冊の中に入れるには押し出しが弱い。いや、内容にケチをつけているわけではないのですが。 ネーションやナショナリズムについては「現代日本社会研究のための覚え書き――ネーション/国家」で考えをまとめたということもあり、自分として書くことは特別無いのですが、以下に引く濱口先生の議論について少し。 さて、特集の方ですが、高橋=萱野対談が、ナショナリズムを否定するのなら、国内で格差なんて言っても意味がないというテーマを取り上げていて、なかなか面