第1部では、今回の金融危機の日本経済への影響について、金融面と実体経済面それぞれに関する中長期的な観点からの概論の後、金融危機下における中小企業の資金調達の実態に関するアンケート調査に基づく分析の発表、次いで現行の景気循環モデルと両立し得る新しい銀行危機の貨幣的モデルの提案がなされた。 植田 和男 (東京大学金融教育研究センター教授) 日本の金融機関は、今回の世界的な金融危機による直接的な損失は非常に限られたものであったが、手持ち資産をリスク・リターンの変化に応じて積極的にリバランスしない、あるいは環境的にそれができない中で収益が出せていない状況である。 一方、世界の実体経済は、ここまで1930年代の大恐慌時並みの生産減少ペースだが、日本の製造業はそれを大幅に上回る打撃をこうむってきた。輸送機械、電気機械、一般機械等の世界的に需要が急減した分野に日本が特化していること、また、長いサプライチ