世の中には、世界が「字幕付き」で見える人がいる──。もしかしたら、この記事を読んで初めて自覚する人もいるかもしれない。特定の音や数字、色が脳内で結びつく「共感覚」の一種とされ、「ティッカーテープ共感覚」とも呼ばれる、この特殊な脳を持つ人は、話す言葉、聞く言葉、想像する言葉がすべて脳内で「文字起こし」されるのだという。 自分の脳が「普通の人とは違う」ことにカロリーヌ・アンドリウが気づいたのは、かなり歳を重ねてから──45歳頃のことだった。だが、これはカロリーヌと同じ特異な脳を持つ人のあいだでは、さほど珍しい話ではない。 パリ在住のジャーナリストであるカロリーヌは言う。「以前は、他の人も私と同じように、人の話を聞きながら字幕が見えているのだと思っていました」 どうやらそうではないと気づいたのは2018年。仕事で編集を担当した記事で、世の中にはこんな独特な脳を持つ人がいると紹介されていたのを読ん