日経の清水正人編集委員の新著『財務省と政治』は、税と予算を巡る政策決定過程を濃密に描いた第一級の書と言って良いだろう。情報網を張り巡らし、徹底して根回しを行い、政治日程を組み上げ、ここぞの場面で献策する財務省と、細川内閣以降の揺れ動く政治とのせめぎ合いが、臨場感あふれる筆致で明らかにされていく。 ただ、政治過程に関する本だから、当然ではあるが、そうして決められた政策が経済にどう影響したかまでは触れられていない。そのため、あたかも景気は自然現象のようなもので、移り行く天気に振り回されつつ、受身で対しているような、そんな印象を持ってしまう。むろん、財政が景気に影響せず、常に緊縮が正義であるのなら、それで構わないわけだが。 ……… 本書が描く鳩山政権下での予算編成では、選挙公約で示した政策を、国債発行額44兆円の枠内で実施しようとして、調整に四苦八苦するが、そこへ小沢幹事長が時の氏神よろしく登場