本書は子を持つすべての親と、教育者にこそ読んでほしい物語である。主人公はジャイコブ・バーネット、この5月に16歳になるアメリカ人の少年だ。ジェイコブ君はただの少年ではない。9歳で大学に入学し、専門は数学と宇宙論。IQは170を超えるという。いわゆる天才少年なのだ。 しかし、このジェイコブ君は何万人に1人の割合で生まれるといわれる、いわゆる知的早熟児ではない。2歳で自閉症と診断され、16歳になったときに自分で靴ひもを結べるようになっていたらラッキーだと専門家が診断するほどの症状だったのだ。 父母はインディアナに住む労働者階級。父親は小売りチェーン店勤務、母親は自宅を託児所にして生計を立てていた。信仰深いアーミッシュのつつましい家庭に授かった最初の赤ちゃんだった。 自閉症と診断されたジェイコブ君は3歳になる前から、州の補助により言語療法セラピー、作業療法士、理学療法士、発達セラピストなどが週に