経済政策で人は死ぬか?――公衆衛生学から見た不況対策(デヴィッド・スタックラー、サンジェイ・バス著 草思社) 2014年の我が国の公的債務残高(地方分を含む)はGDP比2.3倍に達し、財政破綻が懸念されるギリシャ(1.8倍)を上回る先進国最悪の水準となっている。国際公約となっている2020年のプライマリーバランスの黒字化は容易ではなく、さらに、その先の超高齢社会の道行きを思うと、ため息が出る。 幸いにして、今は15年ぶりの株高などアベノミクスに支えられて、「差し迫った危機」に怯えるような切迫感はないが、冷静に足元を見つめると、油断すれば瞬く間に深刻な事態に陥る危うい状況であることに変わりはない。 こうした財政状況について、「一度、破綻してやり直した方がよい」といった無責任な意見や「社会保障給付を徹底的に削減すればよい」といった過激な意見も見られるが、リーマンショック以降、ギリシャをはじめ欧