降灰と、台風という二つの攻撃にさらされていても、夜が明ければ、西鹿児島駅は、平常どおり、駅としての機能を取り戻すのである。午前五時一〇分の、指宿枕崎線の普通列車を皮切りに、五時三五分になれば、日豊本線のホームから、肥薩線経由の山野行きの普通列車が発車する。六時四五分には、今度は、鹿児島本線のホームから、博多行のL特急「有明8号」が発車する。いや、発車させなければならないのである―。今回は、西村京太郎トラベルミステリーの1つ:『西鹿児島駅殺人事件』のレビューです。 上野駅殺人事件や長崎駅(ナガサキ・レディ)殺人事件などに代表される、十津川警部シリーズの中でも「駅シリーズ」と呼ばれる作品の一種。西鹿児島駅は今でいう鹿児島中央駅のことであり、古くから鹿児島市、いや鹿児島県の代表駅として運行上の拠点となっていた駅でした。県庁所在地名を関する駅とは別の駅が代表駅になっているのは、山口県と同じですね。