藤井は負けを悟ったような表情で、△3八銀で精算して△4七角=図12=と王手飛車をかける。ここで渡辺が▲3九玉としていたら何事も起きなかった。ところが渡辺の指した手は、▲2七玉! 「ええっ」と棋士全員が驚く。これでは△3七歩成と「王手で」成り捨てられて、6九の馬の利きが通ってしまうではないか。 渡辺は60秒では詰みを読みきれず、119手目に▲3二銀。控室で悲鳴があがり…以下の手順は記したくない。正確には、藤井の△4二金は△4二銀打が正解で、▲4二竜では▲3四歩△2四玉▲3五銀から馬を抜けば再逆転だったが、それはAIでもなければ指せないだろう。▲3二銀で勝負は終わったのだ。