明け方に降った雷雨で、誤って地上に落ちてしまった 両手にバチを持ち、背中に太鼓を背負った 成人男性の手のひらサイズの 雷神の子ども弐体が、手水舎(ちょうずや)の陰から 物珍しそうに、妙齢の女性を眺めている 三毛猫がそれに気が付いて、女性に悪さをしないよう 尻尾を立てて威嚇すると,雷神の子どもたちは 短い脚を急速回転させながら あわてて本殿の床下に逃げ去った かつて女性と青年は、その神社のイチョウの樹で待ち合せては 誰にも邪魔されない、2人のだけの逢瀬の時を過ごした いつしか女性の身体に、新しい命が宿ると 二人は夫婦として結ばれた 女性は仕事を辞め、内職をしながら 双子の育児や家事に励み、男は一生懸命に働き 決して裕福ではないが、暖かい家庭を育んでいた ある日、男性が吐血した 結核だった 程なくして、男性はこの世から旅立った 女性は涙が枯れるまで泣くと キリッとした顔になり 再び外で働きなが