2021年4月4日、量的・質的金融緩和の導入から8年を迎えた。導入当初は2年で2%の物価安定目標の実現を目指していたが、依然として目標達成の目途は立たない。もっとも、デフレではない状況を実現したことは確かであり、量的・質的金融緩和は2016年9月の総括検証や2021年3月の点検(以下、3月点検)を経て枠組みが見直され、持続性の強化と政策効果の向上が図られてきた。3月点検後には「貸出促進付利制度」が導入され、マイナス金利の深掘りによる金融機関への悪影響を緩和することが期待されている。以下では政策変更の目玉ともいえるこの制度のポイントを3点指摘したい。 第一に、マイナス金利の深掘りを通じた金融緩和の余地が拡大した。これにより、今後起こり得る一層の長期金利上昇圧力や「有事の円買い」等の外生的なショックへの耐性が高まったといえよう。第二に、追加緩和のオプションが増加した。貸出促進付利制度では3つの