「危険だけど必要、必要だけど危険、そんな憂鬱なことどもはこの世にいくらでもあって、おそらく教育というやつはその種の事柄に属していて、そしてさらに道徳教育ってやつはその最たるもの、言ってみれば、教育オブ教育なのだと思うのですが、さてどうですかね」(神代・藤谷2019) 2015年3月、学校教育法施行規則および学習指導要領の一部改正により、「特別の教科 道徳」がスタートした。法令上の正式名称は「特別の教科である道徳」、通称は「道徳科」。 戦後教育改革の際、戦前・戦中期の筆頭教科であった「修身」が廃止された後も、官民学を問わずくすぶり続けた道徳教育要求は、1958年に、教科ではない領域としての「道徳の時間」特設にいったんは結実していた。動きが起こったのはそれから半世紀後、第1次安倍政権下に設けられた首相直属の教育再生会議からである。2007年の第2次報告で明記された「徳育の教科化」が、さきの20