出版状況クロニクル59(2013年3月1日〜3月31日) アダム・スミスは『国富論』第一編において、次のようなことを述べている。 労働生産力を向上させた機械の発明や改善は哲学者、もしくは思索家によってなされたのであり、社会の進歩につれて、哲学や思索は他のすべての仕事と同じように、市民の特定階級の主要で欠かせない生業となり、職業にもなったと。ただ第二編において、すべての種類の文士は最もとるに足らぬ職業に分類していたけれども。 このようなスミスの見解を日本の現在の危機の中にある出版業界に置いてみると、社会は進歩しているどころか、むしろ後退しているかのように見えるし、またJPOに対する経産省の介入にしても、スミスであれば、自由主義の立場から反対することは明白である。 大学に職を得ている所謂哲学者と思索家、一部の文士を除き、それらはもはや生業でも職業でもない時代を迎えようとしている。 だがそれが、