薄ら日照り込む成田空港のサクララウンジ、夏の旅行客たちのざわめきのなか、海のなかが素敵でキラキラと美しい酷く不味そうな魚の群れがフィンに寄ってくるのよ、と初対面の峰子が一辺倒に話し続けている。遠くで旅行客のゆがんだ笑い声がどっと上がった。いつの間にか、ラウンジは満席になっていた。峰子の背後で、積乱雲の浮かぶなかへとジェット機が昇って行く。飲みかけのアイス珈琲を置いたまま空港をでた。そしてふたりは手を繋いで陽炎ゆれる駐車場まで歩いた。 スズランの香りがゆれた。四0キロほど走らせると空を彩りだした鉛色の雲から、ちらつき光る小雨が裾を広げ始めた。対向車線はダンプカーの渋滞になっていて、ヘッドライトが道の遠くまで数珠繋がりに伸びている。ラジオを点けたが、この辺りはいつもラジオの電波が混線する。窓の外の光景が沈んで行く様だった。湾岸工業ベルト地帯が見えるエリアでワイパーの速度を上げた。もうすぐたどり