北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キム・ジョンナム)氏が、マレーシアのクアラルンプール国際空港で殺害された事件は、2017年2月の発生から1年半以上たった今も、新事実が次々発掘されています。事件後に捕まった実行役の公判で新しい証言が飛び出したり、口を閉ざしてきた関係者が取材に応じたりしているからです。世界を揺るがした暗殺事件の秘話を紹介します。 【秘話1】突然瀕死、医師たちの攻防 2017年2月13日朝、マレーシアの空港にいた正男氏の背後から、見知らぬ女が近づいた。目隠しをするように両手で正男氏の顔を覆い、謎の液体を塗りつけた。女が現れてから立ち去るまで、わずか数秒。取材で入手した空港の監視カメラ映像には、その一部始終が記録されていた。 午前8時58分、マレーシアの首都郊外のクアラルンプール国際空港。監視カメラは、空港3階の出発ホールに向かう正男氏の姿を映