香味野菜「パクチー」が日本で広く食べられるようになったのは、この10年ほどのことだ。その火付け役といわれるのが、東京・経堂にあった日本初のパクチー専門店「パクチーハウス東京」。満席続きの人気店だったが、2018年に閉店。その店主は、いま千葉県鋸南町で「パクチー銀行」を開いている。その異色の活動について、フリーライターの川内イオさんがリポートする――。 「パクチー銀行」を開いたパクチー伝道師 東京駅から千葉方面へ下って2時間20分ほどで、JR内房線の保田ほた駅に着く。無人の改札を出ると、最も目立つところに、恐らく誰もが「⁉」と二度見する建物がある。そこには、「パクチー銀行」と記されている。オーナーは佐谷恭さたに きょうさん。 パクチー好きなら、彼の名前を聞いたことがあるかもしれない。2007年11月、飲食の経験ゼロで東京・経堂に日本初のパクチー専門店「パクチーハウス東京」を開いた。その理由が