権威でもなく、名声でもなく 『顔のない裸体たち』 2007年09月10日 [評者]落合早苗 平野啓一郎氏の作品を読んだことがおありだろうか? 1998年新潮社発行の文芸誌「新潮」8月に投稿した『日蝕』で文壇デビューを飾り同作品で99年の芥川賞を受賞した氏は、無名の新人だったにもかかわらず伝統的な文芸誌に作品が採用されたことや、最年少タイの23歳(当時)での芥川受賞、また三島由紀夫の再来とも称されて話題を呼んだが、気がつけばそれも8年前のことだ。 その平野啓一郎氏の純文学作品が、ケータイで売れている。『顔のない裸体たち』(新潮社)だ。初出は2005年「新潮」12月号。翌2006年3月に同社より単行本化され、2007年4月に電子書籍化されてPC・ケータイ(au)向けに配信された。 本作品は、出会い系サイトにハマってしまった女教師が破滅していく過程を描いたストーリー。ネット社会の闇というありがち
辻仁成氏が新作長編 絶望の時代に希望を書く 2007年04月26日 作家の辻仁成氏が、中学校での殺人事件に巻き込まれた少年の揺れる心を描く『ピアニシモ・ピアニシモ』(文芸春秋)を刊行した。すばる文学賞を受けたデビュー作『ピアニシモ』(90年)の主人公トオルとその分身ヒカルを再登場させ、まったく別の物語に仕立てた長編だ。移住先のパリから一時帰国した辻氏は「自分の原点に戻りつつ、今の時代を見据えるための試み」と語る。 「もうすぐ50歳にして初の少年小説に挑んだ」と語る辻仁成氏=東京都千代田区で 辻氏は「『ピアニシモ』を書いた80年代は、空虚ではあったが豊かで安全だった。だが、この18年くらいの間に世界は絶望的に変化した。9・11事件で人類はパンドラの匣(はこ)を開けたと思う。テロは姿なき人々による終わりなき戦争で、どちらが正義かもわからない。ヨーロッパにいると危険が実感されます」と語る。 「8
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く